1989年に国連で採択され、現在196の国と地域が締約する「子どもの権利条約」。日本も1994年に批准しましたが、これまで国連子どもの権利委員会から繰り返し「勧告」を受けてきたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、日本が「子どもは権利の主体」という世界の認識に追いつけないでいる理由を考察。さらにそのような政府の動きの緩慢さが、この国の子どもの命を脅かしていると強く非難しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「しあせに暮らす」ためのルール
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
「しあせに暮らす」ためのルール
みなさんは「子どもの権利条約」を知っていますか?
この条約は「児童の権利に関する条約」とも呼ばれ、世界中のすべての子ども(18歳未満の人)が持つ人権=権利を定めた条約で、1989年に国連で採択されました。
子どもの権利条約は、子どもが守られる対象であるだけでなく、権利をもつ主体であることを明確にしました。親に養育されていても大人と同じ、ひとりの人間としてもつ様々な権利を認めるとともに、成長の過程にあって保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。
具体的には、「生きる権利」や「成長する権利」「暴力から守られる権利」「教育を受ける権利「遊ぶ権利」「参加する権利」などです。この条約が採択されてから、世界中で、多くの子どもたちの状況の改善につながってきました。
現在までに、日本も含め196の国と地域が締約しています。11月20日の「世界子どもの日」は、日本が条約を批准してから30年の節目ということもあり、多くのメディアが取り上げていました。
しかし残念なことに、日本は国連子どもの権利委員会から、度重なる勧告を受けています。緊急措置をとるべき分野としては、差別の禁止、子どもの意見の尊重、体罰、家庭環境を奪われた子ども、リプロダクティブヘルスおよび精神保健、少年司法に関する課題などで、19年には「女子高生サービス」(JKビジネス)など子どもの買春および性的搾取の促進またはこれにつながる商業的活動を禁止するように求められました。
日本の人権状況は「後進国レベル」と批判されるほど、人権意識が低いのです。その上「子どもは権利の主体」という認識も低いのが現状で、政府も国連から勧告を受け続けているのに、“感度”が極めて悪く、積極的に動いていません。
そもそも「え?そんな条約あるんだ?」「え?そんなに色々と勧告されてるんだ?」という人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
世界は「子どもは権利の主体」という認識に変わっているのに、なぜ、日本はアップデートできないのか?「人権」という言葉自体は誰もが知っているのに、なぜ、それがどういうものなのかを正確に認識している人は決して多くないのか。
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