拮抗する与野党の支持率。韓国の深刻な分断を招いた要因
尹大統領の逮捕という前例のない事態のなか、しかし注目すべきは、この危機的状況下で与野党の支持率が拮抗し、むしろ与党の支持率が上昇傾向にあるという予想外の展開である。この現象は、韓国社会の複雑な力学と、政治的分断の深さを如実に物語っている。
韓国ギャラップの調査によると、尹大統領の弾劾に賛成する意見が57%である一方、反対意見も36%に達している(*10)。さらに、リアルメーターの調査では、大統領の逮捕に対して54.4%が賛成する一方で、44.5%が反対している(*11)。これらの数字は、韓国社会が深刻な分断状態にあることを如実に示している。
特に、年代別や性別によって意見が大きく分かれていることは、この分断が単なる政治的対立を超えて、社会の根本的な価値観の相違に根ざしていることを示唆しているだろう。
分断の背景には、韓国の複雑な政治史と社会構造がある。韓国社会は長年、保守派と進歩派の対立に悩まされてきた。対立は単なる政策の違いを超え、歴史観や国家観の根本的な相違に基づく。
例えば、日本統治時代の評価や北朝鮮との関係、経済政策など、様々な面で両者の見解は真っ向から対立(*12)。また対立構造は、政治の場だけでなく、メディアや教育の場にも及んでおり、社会全体を二分する結果となっている。
さらに、SNSの普及により「エコーチェンバー」現象も起き、結果、相手の意見を聞く機会が減少し、分断がさらに深まるという悪循環に陥っている。
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■引用・参考文献
(*1)「韓国・尹大統領の身柄拘束 取調室で事情聴取も“供述を拒否”徹底抗戦の構え」日テレNEWS 2025年1月15日
(*2)日テレNEWS 2025年1月15日
(*3)鴨下ひろみ「尹錫悦氏親衛隊『白骨団』の不気味さ…『韓国大統領拘束』で加速する陰謀論と若者層の分断 フジテレビ客員解説委員」FNNプライムオンライ 2025年1月16日
(*4)「【解説】尹大統領の拘束、韓国国民はどう反応したのか 深まる分断」BBC NEWS JAPAN 2025年1月16日
(*5)「韓国大統領を正式に逮捕、裁判所が新たな令状発布-非常戒厳巡り」Bloomberg 2025年1月19日
(*6)Bloomberg 2025年1月19日
(*7)「アングル:韓国大統領と人気右派ユーチューバー、『シンクロ』は偶然か」REUTERS 2024年12月17日
(*8)FNNプライムオンライ 2025年1月16日
(*9)「韓国の大統領公邸がYouTuberたちの『聖地』に… 戒厳令の後は右派と左派がディスり合ってカオス状態」東京新聞 2025年1月15日
(*10)「韓国、党支持率が与党39%・野党第1党36%に…政権喪失の危機感で保守結集か」HANKYOREH 2025年1月18日
(*11)「4割超が尹大統領逮捕に反対 分断あらわに 韓国世論調査」毎日新聞 2025年1月9日
(*12)澤田克己「研究レポート 政治的分極化進む韓国社会」公益財団法人 日本国際問題研究所 2024年3月26日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年1月19日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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