中居正広「フジ女子アナ献上疑惑」で浮き彫りに。日本のアナウンサー文化が抱える構造的な課題

 

「情報を正確に伝達する」役割に限定。日本では「アナウンサー」の呼称が一般的な理由

日本のテレビ業界で「アンカー」ではなく「アナウンサー」という呼称が一般的に使用されるのは、日本特有のメディア構造と社会文化が深く関係しているためである。

日本の放送局では、大学新卒者を採用し、社内で長期的に育成するという独自の人材育成システムが確立されている。このシステムは、終身雇用制度と密接に結びつき、アナウンサーを「情報を正確に伝達する職業」としての役割に限定する傾向がある(*10)。

一方、欧米ではテレビ局に限らず、職務には専門的な知識や経験が重視されるため、アメリカのアンカーは単なるニュースの読み手ではなく、時に番組の編集方針に関わり、社会や政治に影響を与える発言力を持つ存在とされている(*11)。

例えば、ウォルター・クロンカイト氏のようなアンカーはベトナム戦争や大統領選に大きな影響を与えたことが知られている。

日本でも、1962年にTBSの『ニュースコープ』が始まり、田英夫や戸川猪佐武といった元新聞記者がアンカー役を務めていた(*12)。しかし、現在の日本のテレビ各局の夜のニュースショーでは、重厚感のあるアンカーマンの存在が少なくなっている。

一方、NHKの『ラジオ深夜便』では、アナウンサーを「アンカー」と呼んでおり、「放送や新聞社などでの最後のまとめ役」という意味で使用している(*13)。

資料

ウォルター・クロンカイト氏とは?

アメリカのジャーナリズム史に大きな影響を与えた伝説的なテレビジャーナリスト。

  • 経歴
    1916年11月4日、ミズーリ州セントジョセフで生まれる。1962年から1981年まで、CBSイブニングニュースのアンカーを務める。「アメリカで最も信頼される人物」と呼ばれ、1960年代から70年代にかけて、アメリカのニュース報道の顔に。
  • 主な報道
    ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件 ベトナム戦争 アポロ11号の月面着陸
    ウォーターゲート事件
  • ジャーナリストとしての特徴
    正確性、公平性、冷静さを重視した報道スタイル
    「And that’s the way it is(以上が本日のニュースです)」という特徴的な締めの言葉
    単なるニュース読み上げ役ではなく、ジャーナリストとしての専門性と編集者としての役割を兼ね備えていた。
    ベトナム戦争に関する彼の報道は、アメリカの世論に大きな影響を与えた。またアメリカの宇宙開発の詳細な報道により、「宇宙のディーン」とも呼ばれる。
    数々の賞を受賞し、1981年には大統領自由勲章を授与される。
    2009年7月17日に92歳で亡くなる。

【関連】中居・フジ騒動の陰で中国に上納された日本。なぜ岩屋毅外務大臣は「ネット検閲強化」を中国共産党に約束したのか?
【関連】週刊文春“記事訂正”の罠にハマる中居正広とフジテレビの罪。日枝久の退陣は必然、やりなおし会見で露見した異常性
【関連】フジテレビ日枝久が「中居正広」よりも恐れる「もう1つの暗部」…ダルトンもすでに把握、「反社会的勢力との手打ち疑惑」に重大関心
【関連】【中居フジ問題】関テレ大多亮社長の“不倫騒動”に芸能記者が今、思うこと。鈴木保奈美との『東京ラブストーリー』禁断愛から30余年…心境に変化も?
【関連】中居正広の「女性トラブル隠ぺい」など氷山の一角。昨年末に公正取引委員会を動かした“日本芸能界の闇”

引用・参考文献

(*1)「アナウンサーの歴史を知ろう」スタディサプリ
(*2)「アナウンサーの歴史を知ろう」スタディサプリ

(*3)「劇場版 アナウンサーたちの戦争

(*4)「専門化が進む実況アナと今後の苦難。

(*5)池上彰「池上さんが考える NHKからフリーに転身したアナウンサーの“苦労”」文春オンライン 2018年8月1日

(*6)「アナウンサーの歴史を知ろう」スタディサプリ

(*7)「アナウンサーの歴史を知ろう」スタディサプリ

(*8)「じじぃ放談13『錨』なきニュースショー」kachi kachi plus 2021年7月12日

(*9)「じじぃ放談13『錨』なきニュースショー」kachi kachi plus 2021年7月12日

(*10)「アナウンサー・キャスター・リポーターの違いとは?NHKではどう定義されている?」日本語マニア。 2018年6月20日

(*11)「アナウンサーと似ている仕事との違いは?」スタディサプリ

(*12)「じじぃ放談13『錨』なきニュースショー」kachi kachi plus 2021年7月12日

(*13)「ラジオ深夜便」NHK財団

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年2月2日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Chatchawat Prasertsom / Shutterstock.com

伊東 森この著者の記事一覧

伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版) 』

【著者】 伊東 森 【月額】 ¥1100/月(税込) 初月無料 【発行周期】 第2、第4日曜日発行

print
いま読まれてます

  • 中居正広「フジ女子アナ献上疑惑」で浮き彫りに。日本のアナウンサー文化が抱える構造的な課題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け