空気も本も読めない石破首相は堺屋太一を“誤読”している
石破首相は1月24日の施政方針演説で次のように述べた。
故・堺屋太一先生の著書によれば、我が国は、明治維新の中央集権国家体制において「強い日本」を目指し、戦後の復興や高度経済成長の下で「豊かな日本」を目指しました。そして、これからは「楽しい日本」を目指すべきだと述べられております。私はこの考え方に共感するところであり、かつて国家が主導した「強い日本」、企業が主導した「豊かな日本」、加えてこれからは一人一人が主導する「楽しい日本」を目指していきたいと考えております。
世の中の雰囲気を変えたいと思ったのかもしれないが、「楽しい日本」というキャッチフレーズに違和感を抱いた人は多いようだ。
「苦しい国民生活の状況を認識していない」(国民民主党 古川元久代表代行)
「最終的な目標として“楽しい日本”を目指すことは必要です。そのためにもまず作り上げるべきは“強い日本”では」(自民党 小野寺五典政調会長)
緊張感を増す世界情勢に不安を抱き、重税感と物価高に苛まれ続ける一般市民の心情に寄り添うことをせず、カラ元気を促すような虚しい文言を振りかざしても、無神経と思われるのがオチだ。よく言われるように「空気が読めない」ということか。
そもそも、堺屋氏の言いたかった「楽しい日本」とは、関西・大阪万博を後押しする意味も含まれているわけであって、その著書『三度目の日本 幕末、敗戦、平成を越えて』からも「楽しい日本」の具体的なイメージを読み取るのは難しい。
石破首相は「すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、『今日より明日はよくなる』と実感できる国家」だと言い、「令和の日本列島改造」を政策の柱に掲げるが、地味なわりに膨大なコストと人員を要する老朽インフラの管理、補修という項目は抜け落ちている。
夢のある新規事業も必要だろう。しかし、現在の生活を維持するためのインフラがあちこちで壊れはじめたら、「すべての人が安心と安全を感じる」などということは夢のまた夢である。









