“上司へのゴマすり”も“定時で帰るウラ技”も含まれるべき。2000年代の「仕事術ブーム」を考察することが無意味ではない理由

 

■あらわになる二つの「仕事」の大きな違い

現代においても、同じような共通性を維持しているデスクワーカー≒知識労働者もいるとは思います。そういう人たちはフリーランスと「仕事術」について話を続けることができるでしょう。

しかしながら、ぐんぐんと裁量が減っている職場もあるはずです。そうした職場では工夫する余地は少なく、一人だけ工夫をすることで周りから反感を買う可能性すらあります。それでは為せる仕事も為せなくなるでしょう。

ここにきて、二つの「仕事」の大きな違いがあらわになります。

フリーランス的仕事では、基本的に自分が成果を挙げることに注目すればいいわけです。複数人で仕事をすることがあっても、チームでの成果に責任を負う必要はありませんし(それはチームの責任です)、後輩の指導といった「自分以外の」課題を抱える必要もありません。上司からの評価、みたいな話もまったくスルーできます。ややこしい仕事は、お金を払って外注することすら可能です。

翻って、組織の仕事はどうでしょうか。自分だけが仕事をできてもうまい結果になる保証はなく(ひたすらに仕事を振られてより忙しくなる状況が未来視できます)、チームとして成果を挙げる必要があり、自分以外の人間をケアすることも仕事の範疇に入っているでしょう。個人の裁量で外注なんてもってのほかです。

2025年の現代において、組織内の「仕事」で何が評価されるのかは私はぜんぜん推測できませんが、お気楽なフリーランスと同じではないだろうことは簡単に推測できます。

そして同じ組織であっても部署によって違いがあり、同じ職種であっても組織によって違いがあり、その人のキャリアプランや家庭環境によっても違いがある。

それが現代日本における「仕事」でしょう。それらを一刺しで貫ける必勝の剣などありようもありません。

■「仕事術」を含むノウハウ全般とつき合うために必要な姿勢

であれば、「仕事術」について論じるのは無意味なのでしょうか。

もちろんそんなことはないでしょう。「教師の仕事術」のようにコンテキストを限定すれば建設的な話はできるはずです。実際、2000年から2010年くらいの仕事術も「知識労働者の仕事術」とリネームすれば成立する話はいくらでもありそうです。

先ほど出てきた上司との人間関係を構築することも「仕事術」の一部になるでしょうし、できるだけさぼって定時で帰れるようにすることも「仕事術」に含まれるべきだと私は思います。

単一のキーワードで括れる(英語的に言えば大文字の)「仕事術」はもはや成立しなくなったでしょうが、逆に、さまざまな状況や目的に合わせた多数の「仕事術」が必要とされるようになってきている。それが現代的状況なのだと思います。

生産性は1ミリも上がらないけども、職場で働くときに少しでも居心地良くやっていくための方法、といったものもれっきとした「仕事術」です。

そのように全体を広く捉え、その上でコンテキストを限定していく。そういうつき合い方がよいかと思います。

でもってこれは「仕事術」だけでなく、ノウハウ全般にも言えることでしょう。逆に言えば、何かしらのノウハウを見かけたときに、「これはどんなコンテキストで有効なノウハウなのだろうか」と考えるのが、多様性かつ情報過多な時代には必要な姿勢になりそうです。

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1980年生まれ。関西在住。ブロガー&文筆業。コンビニアドバイザー。2010年8月『Evernote「超」仕事術』執筆。2011年2月『Evernote「超」知的生産術』執筆。2011年5月『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』執筆。2011年9月『クラウド時代のハイブリッド手帳術』執筆。2012年3月『シゴタノ!手帳術』執筆。2012年6月『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』執筆。2013年3月『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』執筆。2013年12月『KDPではじめる セルフパブリッシング』執筆。2014年4月『BizArts』執筆。2014年5月『アリスの物語』執筆。2016年2月『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』執筆。

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