「全盛期の遺物」ということになるトヨタ
もう1点、輸出入の動向を見る時に重視すべきは、トータルとしての金額・数量の増減だけでなく、どういう品目が主力になっているかという“質”の側面である。
本誌が〔付録の参考資料でも明らかなように〕昔から着目しているのは日本関税協会の「外国貿易概況」で用いられる「商品特殊分類別」の数値である。表3は、2022~24年のその数値と、参考までに2010年のその数値を示した。
● 表3
外国貿易概況は輸出入額を「主要商品別」と「商品特殊分類別」とで発表している。例えば主要商品別の「電気機器」は24年に11.4兆円輸出し、そのうち半導体等電子部品が3.3兆、映像機器が8,450億円であったことが示されているが、商品特殊分類別では、資本財の中の電気機器で10.7兆円、耐久消費財の中の家庭用電気機器で1,020億円が計上されており、「電気機器」と言っても今ではテレビなど家庭用電気器具類の輸出はわずかで、ほとんどが世界トップ級の医療機器、半導体や光ファイバーを使った高度計測機器、鉄道運行管理システム、テレビ・ラジオ放送用の専門機材といった業務用のハイテク製品であることを示している。
「主要商品別」だけで見ていると、このような日本の電気機器輸出の“質感”が伝わってこないのである。
資本財はもちろん消費財の対概念で、消費財は外国に渡ってそのままの形で消費者の手に渡るものであるのに対し、資本財は生産に必要な設備、素材、部品等々として相手国の工場主など生産者の手に渡ってその資本形成に資するもので、小分類は一般機械(高度工作機械など)、電気機器(半導体関連、医療機器、光ファイバーなど)、輸送機器(ロボットなど)に分かれていて、言うまでもなく世界中で評価が高い日本のモノづくりの結晶部分である。
また商品特殊分類別の「工業用原料」には粗原料、鉱物製燃料(日本にそんなものを輸出する力があるのかと思うが、例えば冬季を終えて余った灯油を東南アジアなどに輸出して航空機燃料にするといった頃があるらしい)、化学工業生産品、金属、繊維品などの小分類があるが、この化学品や金属、繊維品には(全てがそうではないようだが)、日本でしか作れない、もしくは日本が品質において圧倒的に優位にある非常に高度のハイテク素材やそれを使った超精密部品といった高付加価値のものがたくさん含まれているという。
そこで、その資本財と工業用原料に分類されているものを大雑把に、全世界のモノづくりに役立っている高付加価値商品とみなして、それらの総額に対する比率を見ると、24年で69.1%、すなわち約7割を占めている。
表に載せた2010年の同じ比率を計算すると75.9%で、かつてはもっとその比率が高かったことが窺えるが、いずれにせよ、日本は高度成長期までの繊維製品、家電、乗用車などの消費財・耐久消費財の洪水的な輸出で勝負した時代をとっくの昔に卒業していて、今なお消費財輸出で頑張っているのはトヨタをはじめとした乗用車のみなのである。裏返せば、トヨタは全盛期の遺物ということでもある。
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