条件次第で試してみる価値がある「米国のガザ所有案」
では、イスラエルと中東諸国を巡る情勢はどうでしょうか?
こちらにもトランプ大統領は深くかかわり、すでに波風も立てまくっていますが、ウクライナの場合とは少し事情が違うように思います。
まずトランプ大統領自身、娘婿がユダヤ人(ジャレッド・クシュナー氏)ということ以外に、ネタニエフ首相が自分に忠誠を誓っていることや、自らの支持基盤としてユダヤ系の団体が付いていることなどもあり、基本、親イスラエルです。
ただ今回の選挙において、アラブ系アメリカ人を味方につけ、その際、「バイデン政権はアラブを見限った」と散々こき下ろしたがゆえに、アラブ社会にも無碍にできないという事情から、「私はアラブの平和にもかかわる」という主張になっています。
イランに対しては相変わらずハードライナーですが、それでもサウジアラビア王国とイランが外交関係を構築していることもあり、あまりアラブを刺激したくないとの思いから、前政権時に比べると、あたりがまだソフトな感じです。
核開発については「やめとけよ」的なアピールに止め、「私はイランとイラン国民の平和と幸福を願う」とまで踏み込んで、これ以上、中東地域に余計な波風を立てないでおこうという思惑が見て取れます。
ただ“ガザ所有”と“パレスチナ人の移住”案は地域に波風を立ててしまっていますが、長年の係争案件となり、ガザがハマスというテロの温床になっているという見立てが正しいのであれば、かなり乱暴な案ではあるものの、イスラエルとパレスチナの間にアメリカを挟み込み、半強制的に紛争を止めるという荒業は一考に値するかもしれないと感じてしまいます。
これまで2国家共存こそが唯一の和平の道として、アラブ諸国も欧米諸国も本件を扱ってきましたが、これまで75年間にわたり、4度の中東戦争と数々のpeace talksを経ても、問題の解決には至っていない現状に鑑みると、まさに他人事と非難されそうですが(とはいえ、シリアとレバノンの案件にはどっぷり関わっています)、無理筋だとしても、具体的に方法を考えてみるのも面白いのではないかと感じています。
ただ元々の問題の発端は英国の二枚舌(いや、三枚舌)、フランスの関与と欺瞞、ホロコーストへの深い同情、そしてアメリカの一方的な後押し(トルーマン大統領は、イスラエルが独立宣言後、11分後に承認を表明)で、列強でよそ者たちの強引な関与なのですが、その後のアラブ諸国の安定を、アラブ諸国に丸投げし、その上でイスラエルをデフォルトとして受け入れさせるという強引な要求を、支援というエサを用いて、押し付けてきたことで、問題を未解決のまま、放置してきたことにあると思われます。
もしトランプ案が本気でアメリカがアラブの問題をいったん引き受けて解決し、その後、戻すというような荒業をする気なら、それは試してみる価値はあるかもしれません。ただし、安全と安定の保証をしっかりとアメリカが行い、ガザの再開発に、アメリカの企業のみならず、アラブの現地企業も参加させることが大前提だと考えますが。
ただこれもやはり「俺ってすごいだろう?」というトランプ・ファーストの主張で、かつ再開発によってアメリカの利益を増加させ、かつ国内ではないにせよ、雇用も創出するというアメリカ・ファーストの思考からくるものであって、決して真にガザの人たちやアラブの人たちに寄り添った、pro-Arabの政策ではないことを、忘れないようにしないといけないと考えます。
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