ウクライナ戦争の停戦協議ではレアアースの権益を要求し、ガザ紛争の解決策としてアメリカによる同地区の所有とパレスチナ人の移住をぶち上げたトランプ大統領。まさに世界はトランプ氏ひとりに翻弄される状況となっていますが、はたしてこの混乱が収まる日は訪れるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、2つの戦争を巡る各国の動きや思惑を詳しく解説。さらにそれぞれの「ディール」の行方次第で起こり得る最悪の事態を予測しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:Breakthrough? それともBreak down? ─ 混迷する国際秩序の行方
炸裂する「トランプ節」に呆れる世界。混迷する国際秩序の行方
「ロシアによるウクライナ侵攻から3年が経ったけれど、誰が本当にウクライナやウクライナ人のことを本気で心配し、寄り添っているのだろう?」
「ハマスによるイスラエル急襲とイスラエルによるガザ侵攻から1年と4か月経ったが、目にしているのは平和への希望ではなく、増え続ける悲劇と紛争の拡がりだけ。本当にガザの人に寄り添っているリーダーはどれだけいるのか?そして、イスラエルが抱える深い恐怖心を理解しているリーダーはどれだけいるのか?」
そのような疑問を抱く機会が増えました。
トランプ大統領が再登板し、公約通り、矢継ぎ早に戦争・紛争の終結に向けて動き回っています。しかし、周りに相談して行うのではなく、自分の中で固まっているアイデアと、突如、まるで直感のようにひらめくアイデアを織り交ぜて、突如、突拍子もないことを言いだすことで、確実に世界は混乱しています。
2月4日の「ガザ地区はアメリカが所有し、ガザのパレスチナ人は周辺国に受け入れてもらう」というアイデアは、これまでパレスチナ人の自決権の尊重と2国家共存による解決を軸にしてきたアラブ諸国を激怒させ、体裁を気にする欧州各国の反発を喰らいました。
2月12日以降、米ロ間で進めるウクライナ戦争の停戦協議は、ウクライナと欧州をのけ者にして進められていることから、ゼレンスキー大統領の大反発と欧州各国の抗議を引き起こし、こちらもまた大混乱です。
ウクライナ絡みでは、トランプ節がさく裂し、「これまでアメリカが供与してきた5,000億ドル相当のレアアースの権益をウクライナはアメリカに対価として渡すべき」という案も飛び出し、呆れる国々も増えている状況です。
それでもレアアース絡みの話はどうも今週末にはまとまるらしいという噂が流れてきており、表に出てこない何かが存在することを予感させる状況です。
「欧州は協議に関与しなくてはならない」
こうECのフォンデアライデン委員長は強調し、英国のスターマー首相も「欧州軍を平和維持軍としてウクライナに駐留させることに合意するなら、和平協議にも英国は関与しないといけない」と主張して、国際社会におけるハイライトの分け前を求めています。
欧州を代表する形でワシントンDCを訪問し、トランプ大統領と会談したフランスのマクロン大統領も、自国内での窮状を挽回するためなのか、ここにきて持論の欧州による安全保障へのコミットメントの拡大を再主張していますし、同時にトランプ大統領にそっぽを向かせないために、不本意ながらフランスも停戦監視のための平和維持軍をウクライナに駐留させるアイデアを飲み込もうとしています。
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