「他の国が悪い」進まぬ停戦協議に激怒のトランプ大統領が犯しかねない“アメリカお得意”の大失敗

National,Harbor,,Md,,Usa-,February,24,,2024:,Donald,Trump,Speaks
 

あらゆる紛争の早期解決を掲げるも、現在のところ大きな成果を挙げられていないと言っても過言ではないトランプ大統領。明らかに成果を焦っているように見受けられるトランプ氏と紛争当事国は、今後どのような動きを見せるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、ウクライナとガザの停戦調停の現在地と関係各国の思惑を解説。その上で、自らが身を置く国際的な調停グループがアメリカの責任で陥っている「懸念すべき状況」を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:功を急ぐ焦りのトランプ外交がもたらす戦争の拡大の足音

第3次世界大戦という最悪の結果も。功を急ぐトランプ外交がもたらすもの

「これではだめだ。うまくいくはずがない」

「アメリカ政府とウクライナ政府の高官がサウジアラビア王国の南部ジッダに集い、8時間を超える協議の末、30日間の停戦に向けた提案に合意した」という情報が入ってきた際、一瞬、希望を持ちかけましたが、この協議の場にロシアが“まだ”入っておらず、そしてロシア軍の優勢が各地で鮮明になっている“ロシア有利”の状況で、ロシアがまじめに乗ってくるインセンティブが欠如していると感じて発した言葉です。

そして、イスラエルとハマスの間の停戦合意の実施の第1段階がまだ完遂されず、恒久的な停戦を巡る交渉のための基盤整理も全く進展していない中、トランプ大統領がSNSを通じてハマスに一方的な最後通牒を突き付け、イスラエルにガザ再攻撃への青信号を出したと解されたため、あまり報じられていませんが、イスラエル軍は即時攻撃態勢に入り、ハマスもどこからともなく再び各地に現れて、
いつ戦争が再発するか予断を許さない状況が表出しています。

その報と分析を受け、同じく「これはだめだ。うまくいくはずがない」とつぶやいてしまいました。

一体何が起きているのでしょうか?

ロシア・ウクライナ間の停戦協議。イスラエルとハマスの停戦合意の継続と恒久的な停戦に向けた折衝。イスラエルとレバノンとの間で結ばれた“停戦合意”。

そのすべてに共通するのが【アメリカが提案した停戦合意である】という点です。

まずウクライナ戦争についての停戦合意の“提案”ですが、これはトランプ大統領が就任前から公言していた【ロシア・ウクライナ戦争の終結】に向けたアメリカ政府(トランプ政権)のイニシアティブとも言い換えることができるでしょう。

2月のミュンヘン安全保障会議の機会に、まず米ロの外交関係者が協議を行い、米ロ2国間で話し合いが進められていくベースが作られました。その場に当事者であるウクライナが呼ばれなかったのは、あらかじめ予想はしていたものの、その後、サウジアラビア王国の仲介で米ロ間の話し合いがスタートし、ウクライナを置き去りにしたことは、さすがに驚きました。

米ロ間での継続協議、そして近日中に米ロ首脳会談を行う旨、発表されましたが、その協議から出てきた“合意”内容はかなりロシア寄りの提案であり、ウクライナのNATOへの加盟の凍結や、明言こそしないものの、すでにロシアが一方的に編入を宣言したウクライナ東南部4州とクリミア半島の“ロシアによる”領有をアメリカが認めるかのような要素が並べられていました(ロシア政府の担当者によると、この米ロ間の“合意内容”がプーチン大統領に上げられ、ロシア政府が検討している内容とのこと)。

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