間もなく就任100日を迎えるトランプ大統領。4月29日のその日までに「成果」を出すことに躍起のトランプ氏ですが、その姿勢は弱者をより窮地に追い込むことは確実と言えそうです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、ウクライナの停戦交渉が完全にプーチン大統領のコントロール下にあるとして、かような状況を招いた背景を解説。さらに国際公証人としてトランプ氏に抱く偽らざる心情を吐露しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:最恐の独裁者プーチン大統領と成果が欲しいトランプ大統領が破壊する世界の平和
ロシアの意のままに進む停戦交渉。最恐の独裁者プーチンと成果が欲しいトランプが破壊する世界の平和
「トランプ大統領が仕掛ける停戦のプロセスが、完全にプーチン大統領にハイジャックされた」
これはロシア・ウクライナそしてアメリカを巻き込んだ停戦交渉に参加する担当者たちが抱いている認識です。
トランプ大統領が描く停戦シナリオは、イスラエル・ハマスの停戦協議プロセスと同じく、3段階に分けられています。
これまでに【30日間のエネルギー関連施設への攻撃停止】という第1段階に原則合意を取り付け、今週の米ロ専門家会議の場で、その合意内容の発効を3月18日に遡って適用することが決まりました。
これまでロシア・ウクライナ双方とも、原則合意後、互いのエネルギー関連施設への攻撃を継続していましたが、これで合意上では即時に攻撃を停止することになります。ただその実効性はかなり疑わしいと感じていますが、まずはこれから30日足らずの期間において、合意が遵守されうるか、しっかりと見ておきたいと思います。
第1段階の“履行”が動き出したのは、今週のリヤドでの協議で第2段階の話し合いが行われたことが背後にあると思われます。
第2段階においては【黒海における通航の安全を確保すること】についてロシア・ウクライナ双方が歩み寄ることが原則合意されましたが、その合意の発効時期や具体的な発効条件などについてはまだ決まっておらず、激しい駆け引きが水面下で繰り広げられています。
第2段階の履行について、ロシア側は従来通り、【紛争の根本的な原因を取り除くものでなくてはならない】という前提条件を突き付けつつ、【ロシア産の農産物および肥料の輸出拡大のほか、取引のための港湾や決済システムへのアクセス改善の支援】を求め、アメリカとの駆け引きに出ています。
具体的にはバイデン政権下で発動された【SWIFTからの遮断】措置の解除や、様々な制裁の解除を求めており、ウクライナ側の全面的な反対を無視して、トランプ大統領と政権はその条件を前向きに検討しているようです。
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