独裁者プーチンに「停戦受け入れ」を懇願するトランプの腰砕け。米国民のみならず世界中の人々が払うことになる大きなツケ

 

強い恐怖と懸念を感じざるを得ないトランプの振る舞い

結果、最近の発言にもありましたが、「ガザへの空爆は始まりに過ぎず、今後はハマスおよびヒズボラの壊滅のために攻撃の手を緩めることはなく、徹底的に対処する」と公言し、おまけに「アメリカとの関係を重視するために、一応、交渉には応じるが、それでも攻撃は継続する」という大いなる矛盾を示して、宿願である「ハマスとヒズボラの壊滅」に突き進み、イスラエルおよびイスラエル国民の国家安全保障の確保のために、いかなる脅威もすべて廃絶するという非常に極端な姿勢を取ることにしたようです。

それに対して水面下ではトランプ大統領は懸念を示し、「ビビ(ネタニエフ首相)よ、いいかげんにしろよ」と伝えているとのことですが、トランプ大統領も公にはイスラエル非難は行わず、困惑しつつもネタニエフ首相の蛮行を止められずにいるというジレンマに直面しているようです。

ここでも“停戦合意の中身を精査せずに、停戦という形式だけを重視し、合意の獲得を拙速に望んだ”という姿勢を、ネタニエフ首相に逆手に取られ、いわば足元を見られて、結局、ネタニエフ首相がやりたいことのお墨付きを与えさせられるという、とんでもない状況に自らを追い込んだと言えるでしょう。

合意・停戦という形式を重んじるがゆえに、内容を精査せず、強者に受け入れを懇願するという今回のトランプ大統領の失態は、プーチン大統領やネタニエフ首相に力を与え、弱者たるガザの一般市民やレバノン国民、ウクライナの市民にさらなる悲劇をもたらすという結果になろうとしています。

「4月末までに停戦が実現するだろう」

トランプ大統領も、その側近も、そう信じて疑わないようですが、プーチン大統領は自身およびロシアの宿願成就のために時間稼ぎを行い、プーチン版の大ロシア帝国実現のために、ウクライナを手中に収め、今回、ロシアに歯向かった各国を次々と堕とすべく、工作する時間を得たと言えます。

ネタニエフ首相については、自身の政治生命の延命を成し遂げ、かつイスラエルの国家安全保障とパレスチナ、そしてアラブ社会という脅威を取り除くための戦いにアメリカを引きずり込み、再びアメリカを地域にコミットさせるという目的を果たす絶好の機会を得たと感じているようです。

平和な世界とはどのような姿かというグランドデザインを持たず、短期的な成果と実利の獲得という欲に駆られて、すでに弱っている人たちを犠牲にして、世界を真っ二つに割ってしまう片棒を担ぐトランプ大統領と政権の振る舞いを前に、今後に対する強い恐怖と懸念を感じざるを得ません。

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