アメリカを厳しく非難するイランの深刻な国内情勢
その中心にいるサウジアラビア王国の皇太子モハメッド・ビン・サルマン氏(MBS)は「民間人が居住する地域への攻撃を最も激しい表現で非難する。イスラエルは攻撃を即時に停止し、国際社会が責任を以てパレスチナ人およびレバノン人の深刻な人道的苦痛を終わらせるために介入しなくてはならない」と述べていますし、トルコのエルドアン大統領に至っては「ネタニエフ政権によるジェノサイドが新たな段階に入ったと言える。国際社会はイスラエルに対して断固とした姿勢と覚悟を示す必要があり、トルコはアラブ諸国と共に行動する用意がある」とイスラエルへの牽制を行っています。
そして宿敵イランのアラグチ外相は「パレスチナおよびレバノンでのジェノサイドと民族浄化の試みは、アメリカの許可のもとに行われており、アメリカも決してその批判から逃れることはできない」と激しく非難し、イスラエルとその背後にいるアメリカへの攻撃を示唆しています(ただし、アメリカへの攻撃は、イランとアメリカの直接的な対峙を招く可能性があることから、イラン政府は非常にデリケートな対応に努めていますが、国内の強硬派を現政権が抑え込めるかどうかわからず、革命防衛隊においては、イスラエルはもちろん、アメリカの権益および国民に対する報復を行うべきといきり立っており、事態はかなり深刻化しているものと思われます)。
ところでなぜネタニエフ首相はこのような蛮行に出たのでしょうか?
特にガザを巡る停戦も、レバノンとの停戦も、アメリカが仲介したものであるにもかかわらず、それを一方的に破ることでトランプ大統領の顔に泥を塗ることになる可能性があることを知りながら、このような行動に出たのはどのような背景があるのでしょうか?
1つは、すでに可決されてその危機は脱しましたが、今月末までに新年度予算を通過させないと、憲法上の規定で即時に総選挙になるという政治的な危機が存在したことがあります。
アメリカの仲介の下、ガザにおける停戦合意が成立したことを受け、戦争継続とパレスチナ人の壊滅を訴える極右政党のユダヤの力が連立を離脱したことで、ネタニエフ政権は議会での過半数を失い、おまけに人質の奪還に失敗していることで国民の支持も失っていることから、予算の可決の見込みはなく、総選挙になってしまえば、自党のリクードは敗北が確実とされ、そうなるとネタニエフ首相に対する数々の訴追が復活して、予想では終身刑を言い渡されると言われていたため、ネタニエフ首相としては自身の保身が最優先課題となっていました。
そこで極右のユダヤの力の要求を呑み、ガザへの再攻撃とレバノンへの攻撃を再開し、党首のベングビール氏を国家治安相の座に返り咲かせて連立政権に再度組み込んでかろうじて過半数を保つという荒業にでたのが、今回の残虐極まりないガザへの攻撃と人道支援の停止という非人間的な行いに発展したと考えられます。
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