独裁者プーチンに「停戦受け入れ」を懇願するトランプの腰砕け。米国民のみならず世界中の人々が払うことになる大きなツケ

 

ウクライナにとどまらないトランプ外交がもたらす悲劇

詳細な準備と計画なきトランプ大統領の外交姿勢は、ウクライナに悲劇をもたらしていると言えますが、同じことは、もう一つの停戦案件であるイスラエルとハマスの停戦合意でも言えます。

トランプ政権誕生前夜の1月19日に発効したイスラエルとハマスの停戦合意の第1段階は、停戦期限の3月1日を迎えても合意内容の完遂は叶わず、恒久的な停戦に向けた話し合いの詳細を決める第2段階が始められることなく、イスラエル側からガザ地域への大規模攻撃の再開に発展してしまいました。

第1段階の失敗は、アメリカが明らかにイスラエル寄りの立場を貫き、ハマスをすべての諸悪の根源として軽視したことに起因すると考えますが、そのアメリカのイスラエル贔屓の姿勢を最大限利用して、イスラエルのネタニエフ首相はガザ再攻撃の口実としました。

イスラエル軍はガザ地区全域に大規模な空爆を加え、地上作戦も再開して、ガザ市民に耐えがたい苦痛を与えています。3月1日に停戦の期限が切れてから3月23日までの間に1万人から2万人の死者が出て、すでに昨年10月7日からの死者数は、少なく見積もっても5万人を超え、まだ1万4,000人以上が瓦礫の下に埋まっていると言われています。

また今回、軍事作戦に加え、イスラエル政府はガザ地区への人道支援を完全に停止し、結果としてUN-OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、ガザ市民の91%が飢餓状態に陥り、92%の住宅が破壊されているとのことですし、ICRC(国際赤十字委員会)によると、医療機器と薬の決定的な不足から、衛生状態の著しい悪化と感染症の急激な拡大が起きており、過去36時間で壊滅的な人道危機が引き起こされているとのことで、イスラエルの非人道性が浮き彫りになっています。

国際社会、ここでは欧州各国と国連を指しますが、イスラエルの蛮行を激しく非難していますが、実質的に何もできないというジレンマに直面していますが、それはイスラエルが全く聞く耳を持たないことと、アメリカ政府がイスラエル擁護から国際社会による介入を一切ブロックしていることが原因と考えられます。

そのイスラエルの蛮行は、同じく停戦が成立していたはずのレバノンへの攻撃という形でも現れ、3月22日には緩衝地帯として設定していたはずのレバノン南部への空爆とイスラエル地上軍の侵攻が起こっていますが、イスラエルのネタニエフ首相とカッツ国防相は「すべての責任はレバノン政府にあり、イスラエルは自衛のためにレバノンに攻撃を加える権利を行使する」と一方的な正当化を行っていますが、これは、ガザに対する攻撃再開と合わせ、アラブ諸国を激怒させ、新たな火種を作ることに繋がってしまいました。

仲介国であるエジプトとカタールは「イスラエルの蛮行は明らかで露骨な停戦合意違反であり、これはアラブへの宣戦布告ととられかねない」と懸念を表していますし、アラブ諸国の首脳会議は「非はすべてイスラエルにあり、イスラエルはその代償を払うことになるだろう」と激怒しています。

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