ロシア側の要求を限りなく呑ませようというプーチンの魂胆
その背後にはもちろん、合意という成果を急ぐトランプ大統領の状況を十分に理解し、早期合意の見返りにロシア側の要求を限りなく呑ませようというプーチン大統領の魂胆がありますが、同時にトランプ大統領が短期的な利益の確保に非常に関心が高いことも十分に理解した上で、【米企業によるロシアの石油・天然ガス事業への参画】【レアアース採掘事業への米企業の参加】【油価引き下げへ一定の協力をすること】という経済的な実利のほか、【イラン核問題への協力】【ロシアで拘束中の米国人の解放】といった外交的な成果・実利も示し、アメリカに譲歩を迫る戦略に出ています。
その背景には「トランプ大統領の支持率が低下し、来年の中間選挙で敗北してレームダックに陥るようなことがあると、ロシア寄りの外交姿勢が取り消される恐れがあり、何としてもそれを避けるために、トランプ大統領に花を持たせることが大事」との思惑も見え隠れします。
そのようなロシアからのラブコールに応じるかのように、実際の停戦交渉を仕切るウィトコフ氏(中東特使)は、リヤドでの協議に先立ち、3月21日に【ウクライナがロシアとの和平合意のため、NATOへの加盟を事実上断念した】【ゼレンスキー氏は大統領選の実施に合意した】【ウクライナ東南部4州は、これまでに実施された“住民投票”により、圧倒的多数がロシアの統治下にはいることを望んだ】そして【大事なことはロシアが実効支配するウクライナの領土を、国際社会がロシアの領土であると認めること】というかなりロシア寄りの発言および見解を示し、ロシアに一刻も早く全面的かつ恒久的な停戦を受け入れて“もらおう”という意図が鮮明に示されています。
ロシア側はそのシグナルを受けて好意的な姿勢を示しているわけですが、黒海における停戦範囲の設定や商業船舶を軍事利用しないなどの内容には合意するものの、黒海絡みの合意、つまり第2段階の発効については「ロシアが提示する条件が認められた場合に限る」という姿勢を崩していません。
その“ロシア側の条件”とは、SWIFTへのアクセス回復やロシア船の港湾に対する制限の解除、食糧・肥料の国際取引に関わるロシア農業銀行などへの制裁解除、輸出業者・保険会社、生産者などへの制裁の一括解除などが挙げられており、トランプ大統領は「前向きに検討する」と答えるものの、「これを認めたらロシアを思いとどまらせるものはない」と強く反対するゼレンスキー大統領の存在が、合意発効を阻んでいるという構図を、ロシアが作っています。
このままでは4月末までの全面的な停戦の実現はおぼつかない状況であるため、トランプ政権はウクライナに対して「ウクライナ国内の原発のすべてをアメリカが所有する」という提案を投げて圧力をかけているようです。
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