「トランプ関税」が計算式で犯した驚くべき“初歩的なミス”。世界を大混乱に陥れた“裸の王様”の大罪

Washington,D.c.,,Usa,-,April,7,,2025:,United,States,President
 

トランプ大統領が「相互関税」の根拠とし、米通商代表部(USTR)がSNSを通じて発表した関税計算式。しかしその計算式自体に大きな誤りがあったことを日経新聞が伝えました。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、アメリカの研究機関が公表したトランプ政権の税率算出における「初歩的な代入ミス」を紹介。その上で、トランプ氏を「全世界から懲罰の対象とされて然るべき」と厳しく批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:米アメリカン・エンタープライズ研究所が解明したトランプ関税の根拠数字のどうしようもない初歩的な代入ミス

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

どうしようもない初歩的な代入ミス。関税計算式まで間違えるトランプのいい加減

4月9日付「日本経済新聞」第2面の余り目立たない辺りに「関税計算、数値にミスか/実際の税率は『1/4』」という記事があった。事実とすれば大変なことで、トランプ政権がびっくりするような数値を振り翳して世界各国を脅し上げているのは茶番という以上の、酔っ払いの認知障害老人の戯言で、相手にするに値しない。

本誌No.1305でも採り上げたUSTR発表の計算式は図の通り(図1として再掲 )。分子のXiは「米国から某国への輸出額」、miは「某国からの米国への輸入額=貿易赤字額」を示す。

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分母のε(イプシロン)は「輸入価格に対する輸入需要の弾性値」で「4」と固定され、φ(ファイ)は「関税を課した場合の輸入価格の変動」で「0.25」と固定された。ところが4×0.25は常に1なので、この部分は意味がなく、実際にはこの数式は「米国の某国に対する貿易赤字を某国からの輸入額」で叙しただけで、世界は「それに一体何の意味があるのか」と戸惑うばかりだった。

米国の輸出額-米国の輸入額=貿易赤字額
   4×0.25(=1)×米国の輸入額

■トランプ政権が代入した「まったく違う数字」

日経記事が根拠にしたのは、米アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)が4日に公表した論文で、早速、ホームページから探し出した。それによると、この分母のφの「0.25」とは「関税に対する小売価格の弾性値」を誤って代入してしまったもので、「関税を課した場合の輸入価格の変動」を表そうとするなら正しくは「0.945」でなければならない。

President Trump’s Tariff Formula Makes No Economic Sense. It’s Also Based on an Error.

そうすると、日本や中国を含むほとんどの国は10%止まりに留まることになる。いやあまあ、全世界を大混乱に陥れるかのような独善的な主張を繰り出すのであれば、余程真剣かつ慎重に、満を持して打って出るべきだろうに、こんな超初歩的なミスが行われるとはどういうことなのか。全世界から懲罰の対象とされて然るべき「お騒がせ男」である。

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