カタールが予言した「トランプ停戦仲介」の大失敗。プーチンを激しく非難か、ゼレンスキーに“責任なすりつけ”か?

 

「紛争案件のつなぎ合わせ」による解決を成功に導く条件

かなり難易度が高く、やり方を間違えると、それこそ世界戦争が勃発しかねない状況に陥りますが、それぞれの言い分・主張を整理し、イシューをリンクさせて紛争終結のための条件の柱(要素)をまず整理します。

そして全体をカバーする共通要素と、ある紛争案件にだけ当てはまる要素を洗い出し、それらをすべてパッケージに入れて要素間の適切なバランスを模索するという手法です。

ウィトコフ氏は個人的な意見を公に述べてしまうのでこの任には向かないと考えますが、最近までカタールが行ってきた調停と仲介のプロセスは、このスタイルに近いように思います。

これを成功に導く条件は、ニュートラルな第3者の専門家が調停・仲介の任に就き、協議には当事者のみが参加することです。

まず仲介者・調停者が各partyの意見、特に関心と懸念について聞き、すべての要素を偏りなく整理して当事者に提示して、まず協議の基盤とすることに対する合意を取ることが必要です。

その際、私がお勧めしたいのは、一つの案ではなく、3つほどのパッケージを同時にテーブルに乗せ、その中のどれをベースに進めるかを当事者間でしっかりと議論させるスタイルです。

仲介者・調停官は当事者全体から請われるまでは“停戦合意案”なるものは提示せず(仮にポケットの中に合意案を忍ばせていたとしても)、あくまでも当事者の意見・主張・関心・解決したい課題などのまとめの作成をファシリテートすることに徹します。

そしてまとめた内容に対して各当事者から意見や感触を聞くと同時に、内容的に不透明なことや解釈が異なりそうなことに対してさら問いを行って、さらに意見やアイデアを引き出させる手助けをします。その都度、まとめの内容を磨き、それぞれの要素に対して共通認識を作り出し、その上で合意の素案をテーブルにあげていいかを尋ねるという手法を取ります。

地域も当事者も異なりますが、当事者のアイデンティティが比較的はっきりしているロシア・ウクライナ戦争と、イスラエル政府とハマスが当事者であるガザ問題の解決は、容易ではないですが、パッケージ化ができるのではないかと考えます。特にロシアから何かしらの妥協を引き出す手段としては使えるかもしれません。

この際、核になるのは、ロシアとイスラエルが相互にやり取りをして、互いの紛争を停止することによって相互に得るものと、逆に紛争を続けることによって失うものを明らかにして整理し、まず両国間で何らかのディールを作り上げることではないかと考えます。それを直接的にウクライナとハマス・パレスチナに提示するか、調停者を通じて示し、意見を聴取するというやり方も有効かと考えます。

かなりデリケートなバランス感覚を必要とし、かつかなりクリエイティブでないと魔法の解決策は導き出せませんが、個人的には不可能ではないと思っています。

例えば、ロシア・ウクライナ戦争とガザ紛争のパッケージに、イランの核問題の解決を“強力要素”として加え、イランに対しては制裁を解除する代わりに、責任をもって親イラン派によるイスラエル攻撃を無期限中止させるという条件を示すというやり方です。

ここでロシアはイランに対してある程度の影響力を発揮できますので、イスラエルとの協議、ディール・メイキングの場で、イランを制御することをオファーとして提示し、イスラエルにはハマス・パレスチナとの仲介にロシアを絡ませることを提示することで、思いもよらなかった解決井向けた図式が描き出せるような気もします。

ただし、イスラエルの願いが“脅威の排除”であり、ガザを破壊し、ハマスおよびヒズボラを壊滅し、ついでに周辺諸国も自国の手の中に収めたいという内容であり、究極目標が自国の存在の確保であった場合には、あまりこの種のクロスオファーのメリットがなくなってしまいますが、いろいろな試みが躓く中、トライしてみる価値はあるかなと考えます。

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