カタールが予言した「トランプ停戦仲介」の大失敗。プーチンを激しく非難か、ゼレンスキーに“責任なすりつけ”か?

Washington,–,Feb.,28,,2025:,President,Donald,Trump,Welcomes,Ukrainian
 

大統領就任から6ヶ月以内にウクライナ戦争の停戦を実現させると豪語してきたトランプ氏。しかしながらその達成の見込みは限りなく低いと言わざるを得ないのが現状です。もはやロシアに蹂躙され続けるウクライナを救う手は残されていないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、ウクライナとガザ両紛争の「現在地」を、調停の最前線に立つ担当者の言葉を交えつつ詳しく紹介。その上で、これらの紛争の解決を一気に図る手法を提示しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:芽吹かない停戦の機運と迷走する国際情勢

アメリカの「多方面外交攻勢」の行き詰まり。芽吹かない停戦の機運と迷走する国際情勢

「残念ながら、仲介の試みは失敗したと言わざるを得ない。悔しいが停戦に向かうモチベーションが見当たらない中、これ以上のコミットメント、深入りは避けるべきだと考える」

先週から今週にかけて複数案件を前に、調停グループ内で議論した際に“当事者”が声を振り絞るようにして出てきた言葉です。

そしてそれはガザ問題とウクライナ戦争両方に対して向けられた不満と懸念、そして何とも言えない無力感が入り混じった言葉です。

ガザ問題にもウクライナ戦争の仲介・調停にも携わるカタールの担当者は「直接的な協議が行われず、つねに仲介者を通して話す間接協議のスタイルを取っている限りは、実質的な意思疎通は行われず、仲介者はそれぞれの意見や条件を抱えて相手方に図り、その考えを持って再度当事者に合意可能か否かを図る、まるで伝書鳩のようなプロセスが続くだけで、解決も合意も望めない。もう疲れた」と嘆いていました。

「ガザ問題については、イスラエルは10月7日の事件を受けて国民感情が高まり、極右の主張が通りやすくなっている中、積年の懸念と脅威であったハマスを圧倒的な力で踏み潰す絶好の機会と捉えているようだ。そのような中でハマスに何らかの妥協を行うような内容を本気で受け入れることはない。それはハマスにとっても同じで、イスラエルの存在に大打撃を与え、アラブ全体をパレスチナの大義に引きずり込む絶好の機会だと捉えているため、こちらも自身の存在の存続の確保が絶対条件となっているが、それをイスラエルが受け入れないことも重々承知なので、妥協を行うことはないだろう。そのような中、アメリカが介入し、その方針が一貫しないどころか、180度転換されるような事態においては、誰が停戦と人質解放のディールを仲介し、どのような合意案を提示するのかが分かりづらくなっている。これは和平プロセスにおいては、致命的な問題だと考える」

「ロシア・ウクライナ戦争については、特段の利害はなく、純粋に中立な第3者として仲介の任に当たった。ロシア・ウクライナ双方と等間隔で位置し、双方の言い分やニーズを明らかにしようとしたが、これもまた当事者間での直接的な協議の場が用意されない中、シャトル外交的な手法でmagic solutionを描き出すのは不可能だろう。この案件は欧米諸国も中国も、またインドやトルコなど多くの国々がそれぞれの利害を持ち、関心を持って、それぞれの立場から考えをぶつけ、かつcoordination(調整)なく、それぞれに行動するような状況では、仲介者としてできることは限られている。アメリカが“仲介者”として前に出てきた今、ひとまず仲介の任は降りて事の成り行きを見たいと思う。ただ、恐らくこの仲介は失敗するだろう」

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