勝つためなら主義主張は関係なしというリアリズムの真骨頂
それは、ともかく。
では、現実主義(リアリスト)は、どう戦うのでしょうか?
たとえば、19世紀末から20世紀初めにかけて、欧州の勢力均衡(バランス・オブ・パワー)が崩れていました。ドイツ帝国が強くなりすぎたのです。イギリスは、どうやって対抗したのでしょうか?
- 日本と同盟を組んだ(これは、主に対ロシア帝国でしたが)
- フランスと和解した
- (日露戦争後)ロシア帝国と和解した
- アメリカと和解した
イギリスは、すでに落ち目の覇権国家でしたが、リアリズム国家でもありました。それで、日本、フランス、ロシア、アメリカと組むことで、「バランス・オブ・パワー」を回復させたのです。それでも、第一世界大戦勃発は防げませんでした。ですが、イギリス、日本、フランス、ロシア、アメリカを敵にしたドイツ帝国に勝ち目はなかったのです。これが、「リアリストの戦い方の基本」になります。いわゆる「同盟戦略」です。
イギリスは、第一世界大戦で勝利しました。しかし、ライバルドイツは、また復活してきました。ナチスを率いるヒトラーは、イギリスにとって大いなる脅威になったのです。
イギリスは、ヒトラー懐柔を試みるも失敗。1939年、第二次世界大戦が勃発したのです。
チャーチル・イギリスは、二つの大国との同盟によって、なんとか勝利することができました。二つの大国とは、アメリカとソ連です。
アメリカは、わかるでしょう。しかし、ソ連は、無神論ベースで「万民平等」を主張している「共産国家」です。「万民平等」ということで、「世界中の王制を消滅させてしまえ!」と主張している。しかし、「リアリスト」のチャーチルは、独ソ戦がはじまった時、迷うことなくソ連と組むことを決断したのです。これが、「リアリズムの真骨頂」です。勝つためなら、相手の主義主張は、関係ありません。
イギリスは、アメリカ、ソ連と組んだおかげで、ナチスドイツを倒すことができました。しかし、第二次世界大戦で疲弊し、植民地を維持していく力がなくなった。覇権は、アメリカとソ連に移っていきました。
イギリスの現実主義を継承したのが、アメリカです。第二次大戦時、ソ連と組んでいたアメリカ。ところが、戦後は、敵国だった日本、そしてドイツ(西ドイツ)と同盟を組むことにしたのです。相手の主義主張に関係なく、勝利のために、組むべき相手と組む。まさに、アメリカは、リアリズム国家です。