「国際関係論的リアリスト」とは言えないトランプの振る舞い
ところで、トランプさんは、「国際関係論的リアリスト」なのでしょうか?
「金がすべてだ!」といえば、この世的には「リアリストだ」と呼ばれます。しかし、国際関係論的リアリストは、「バランス・オブ・パワー」によって平和を達成しようとします。
トランプさんが、「中国は敵ナンバー1だ」と認識していることは間違いないでしょう。なんといっても、中国に145%の関税をかけるのですから。
ですが、トランプさんの振る舞いは、「国際関係論的リアリスト」ではありません。「国際関係論的リアリスト」なら、同盟国を脅したり、高い関税をかけたりすることはないでしょう。
トランプは、中国と戦っている。さらに、同盟国カナダに「アメリカの51番目の州になれ」といい、トルドー前首相を「カナダ州知事」と呼んで、辱めました。メキシコ湾の名称をアメリカ湾にかえて、メキシコを激怒させました。「グリーンランドを購入したい。売らないのなら軍事力行使もありえる」といって、同盟国デンマークを恐怖させました。「パナマ運河を取り戻す!返さないのなら軍事力行使もあり得る」といって、パナマを脅しました。「ガザはアメリカの所有になる!パレスチナ人は出て行ってもらう」と主張し、全イスラム教徒を敵に回しました。
これは、とても「国際関係論的リアリスト」のやり方ではありません。リアリストなら、敵を中国だけに絞るでしょう。同盟国、日本やNATO諸国に相互関税を課すことはないでしょう。米中の間で揺れているインドや東南アジア諸国に優しくし、アメリア陣営に引き入れようとするでしょう。そのうえで、プーチン・ロシアと和解して自陣営に取り入れる試みをする。
これは、「あり」だと思います。実際、アメリカはこれまで、敵だった日本、ソ連、ドイツと組んできたのですから。
ところがトランプさんは、中国と戦いつつ、ロシア、イスラエル以外のすべての国々にケンカを売っています。トランプが理想主義者でないことは、すぐわかります。ところが彼は、国際関係論的リアリストでもありません。
では、トランプは、どんな人なのでしょうか?
「資本主義者」(キャピタリスト)です。
資本主義者は、「ポケットにお金を入れてくれる人、モノは資産、ポケットからお金をとっていく人、モノは負債」と考えます。
そういう意味で、NATOは、アメリカからお金を奪っていくので、「負債」に思える。全ての貿易黒字国は、アメリカからお金を奪っていくので、「不公平」に思える。彼は、資本家の視点から、「負債を整理し」「不公平を改めなければならない」と考えているのです。
というわけで、トランプは、理想主義者でも現実主義者でもなく、資本主義者でした。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2025年4月12日号より一部抜粋)
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