「出光の仕事は金もうけにあらず」。佐三が残した珠玉の言葉
この「日章丸事件」は、戦後日本が産油国と直接取引を行う先駆けとなった出来事であり、世界的な原油取引の構造を石油メジャーによる独占から解き放ち、自由化を促す大きな契機となりました。また、この事件をきっかけに、イランは親日的な国として日本との友好関係を深めていきます。そして何よりも、敗戦によって自信を喪失していた当時の日本国民に、大きな勇気と誇りを取り戻させる原動力となりました。
出光佐三は、次のような言葉を残しています。
出光の仕事は金もうけにあらず。人間を作ることである。経営の原点は人間尊重です。世の中の中心は人間です。金や物じゃない。その人間というのは、苦労して鍛錬されてはじめて人間になるんです。金や物や組織に引きずられちゃいかん。そういう奴を、僕は金の奴隷、物の奴隷、組織の奴隷というて攻撃している。
この言葉に象徴されるように、出光佐三の生き方から私たちが学べることは非常に多くあります。それこそ、自分よりもはるかに「格上の格上」と思われる相手にもひるむことなく、正面から堂々と勝負を挑み信念を貫く姿勢、そして、欧米型の価値観やスタイルに安易に迎合することなく、日本人が古くから大切にしてきた価値観や精神性を尊重し続けるその姿には、現代を生きる私たちにとっても深い示唆があります。
トランプ2.0革命によって世界秩序が大きく変わりつつある今こそ、こうした気概や精神を、私たち自身の中に取り戻すべき時ではないでしょうか。
(本記事は『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』2025年4月25日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はぜひご登録ください)
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