高校生の孫による老夫婦殺害、中3男子による通り魔。いま何の「低下」が事件を引き起こしているのか?

 

「感情リテラシー」を獲得できないまま大人になる子供たち

これは「自分の感情と他者の感情を正確に理解し、適切に表現し、管理する能力」のことで、成長していく過程で、様々な経験を通して徐々に育まれていきます。

幼少期には、親との関わりの中で安心感や信頼感が育まれ、そこから基本的な感情表現や他者の感情への気づきを学びます。学校に行くようになると、友達と協力して何かをやり遂げたり、競争する中で喜びや悲しみといった様々な感情を経験し、それらを言葉で表現したり、相手の気持ちを理解したりする練習を重ねます。

思春期になると感情も複雑化してきます。友人関係や恋愛関係など、より深い人間関係の中で、ときにぶつかり、ときにともに喜び、ときに困難を経験する中で、自分の感情と向き合い、感情のコントロールや共感性が発達していきます。

ところが最近は、感情リテラシーを獲得できないまま大人になる子供が増えていることがわかってきました。

感情リテラシーが低下すると、自分の感情や他者の感情を理解することも難しくなり、共感する力の欠損につながります。私たちは感情リテラシーを育む過程で、社会の基本的なルールや物事の道理、倫理的に正しい行動を学ぶのに、それもできない。結果として、人間関係のトラブルや事件の加害者になってしまう可能性が高まってしまうのです。

NHKの「クローズアップ現代」でも、感情リテラシーの低下が若者の犯罪につながる可能性について警鐘を鳴らし、自分の気持ちを言葉にできない若者が、闇バイトの勧誘者に利用されやすいという事例も取り上げていました。

衝撃的だったのは、犯罪に加担してしまった若者が「人を殺せって言われたらなんら躊躇うことなく殺したと思う」と話していたことです。

若者の感情リテラシーが低下している原因は、さまざまな角度から研究が進められています。貧困や家庭内DVを指摘する研究者もいますし、SNSなどのデジタルコミュニケーションも原因の一つと考えられています。

社会的動物である「私」は、他者とつながることで生き残ってきました。

つながるとは「共感」であり、共感は相手と対面し、見つめ合う状況で生まれる感情です。

対面のコミュニケーションでは、視覚・聴覚・臭覚・味覚に訴える言葉では表現できない、何百もの情報のやりとりがあります。

対面のコミュニケーションが当たり前じゃなくなった今、「私」が考える以上に、「私」たちに必要な力が弱体化してるのかもしれません。

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