安倍政権が蒔いた“社会劣化の種”。川崎ストーカー事件を招いた国家権力の腐敗と怠慢

 

警察組織の腐敗が可視化された「アベ友」の逮捕取り消し

また、60年近くにわたり冤罪に苦しんだ袴田巌氏の無罪が確定した際、畝本直美検事総長がその判決に対して批判的な談話を出し、大きな反発を招きました。

本来であれば、検察の最高責任者として、まず袴田氏のもとに出向いて直接謝罪の意を伝え、冤罪の温床となってきた「人質司法」など、検察の構造的な問題を見直す改革の姿勢を示すべきでした。にもかかわらず、反省の色を見せることなく、検察の正当性を主張するかのような尊大な態度には強い憤りを禁じ得ませんでした。

そして、警察組織の腐敗が可視化された顕著な事例として多くの注目を集めたのが、2015年に発生した伊藤詩織氏に対する元TBS社員 山口敬之氏による性暴力事件です。山口氏は、安倍晋三元首相と親密で、安倍氏を称賛する「よいしょ本」の出版を控えていました。捜査当局による山口氏の逮捕状が発行されていましたが、直前で逮捕が取り消されたのです。

報道によると、山口氏は当時の内閣情報官 北村滋氏に泣きつき、その後、警視庁刑事部長であった中村格氏によって逮捕が取り消されたとされています。

その中村氏は、その後警察庁長官にまで昇進しました。人事は「信賞必罰」が要諦ですが、この人事は、世間的な常識から言えば信賞必罰とは真逆の人事と言えるでしょう。こういうことをやり始めると、組織も社会も徐々に壊れていきます。

さらに、中村氏の後任として警察庁長官に就任した露木康浩氏についてもいろいろと疑問があります。露木氏は、岸田文雄元首相の最側近とされる木原誠二氏の妻が関係しているのではないかとされる過去の死亡事件について、「事件性なし」として早々と再捜査を打ち切りました。

また、昨年発生した鹿児島県警の内部告発事案では、不祥事を通報した警察官を逮捕するという顛末になりましたが、通報者への不当な対応として批判を浴びました。これもまた、組織的な情報隠蔽とモラルの崩壊を象徴する出来事といえるでしょう。

元警視庁捜査一課の叩き上げの刑事であり、『ホンボシ』という著書も出版している佐藤誠氏は、警察組織の不祥事に対して、XやYouTubeなどのメディアを通じて継続的に問題提起を行っています。特に、露木氏をはじめとする警察幹部の判断や姿勢に対しては、遠慮のない厳しい批判を繰り返しており、川崎市で発生したストーカー事件に関しても、多くの的確な指摘を発信しています。

本来、こうした現場経験と倫理観を兼ね備えた人物こそが、警察組織の中枢で要職を担うべきではないかと感じさせられます。

【関連リンク】佐藤誠(元警視庁捜査第一課)

この記事の著者・辻野晃一郎さんのメルマガ

登録はコチラ

print
いま読まれてます

  • 安倍政権が蒔いた“社会劣化の種”。川崎ストーカー事件を招いた国家権力の腐敗と怠慢
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け