安倍政権が蒔いた“社会劣化の種”。川崎ストーカー事件を招いた国家権力の腐敗と怠慢

 

ストーカー被害の相談に迅速かつ丁寧に対応した警察に見る希望

国家権力中枢の腐敗はかくも深刻な状況ですが、こうした話ばかりでは気が滅入ってしまいますので、最後に一つ明るい話を紹介したいと思います。現場には今もなお、真摯で優秀な警察官や刑事たちが確かに存在しており、日々、市民の安全と安心のために誠実に職務を全うしているという話です。

少し前のことになりますが、私の知人の娘さんがストーカー被害に遭ったことがありました。加害者は、彼女のまったく知らない人物で、通勤途中にあるオフィスビルの警備員だったそうです。

ある時期から、その警備員が彼女を見かけると、顔をじっと見つめてきたり、後をつけてきたりすることがあり、彼女は不気味に感じていたそうです。

ある日の夜、彼女が帰宅する途中、その警備員が勤務中であるにもかかわらず持ち場を完全に離れ、執拗に後を追いかけてきたことがあったそうです。

彼女は普段から用心深い性格とのことですが、そのときは機転を利かせて自宅とは別の方向に歩き、咄嗟に近くの駐車場に入り、車の陰に身を潜めたといいます。すると、その警備員はすぐ近くまで迫ってきて、しばらく周囲を行き来しながら、彼女の姿を探している様子だったそうです。

翌日、彼女は両親と共に所轄の警察署に相談に行ったそうです。すると、川崎の事件とは対照的に、非常に迅速かつ丁寧な対応がなされました。

担当の刑事は、まず被害者から事情を丁寧に聴取し、すぐに周辺の防犯カメラの映像を確認、警備員の身元を特定し、ストーカー行為の実態を裏付けたとのことです。

その上で、直ちに警察署に本人を連行して厳重に注意し、ストーカー行為をただちにやめるよう警告を行いました。さらに、その警備員が所属する警備会社にも連絡を取り、配置転換を要請したそうです。

また、被害者の女性には、しばらくの間は通勤経路を変更し、最寄り駅の利用を避けるようにといった防犯上のアドバイスも行いました。

ほどなくして、その警備員の配置転換が実行され、それ以降は彼の姿を見かけることはなくなったそうです。娘さんもご家族も、その知らせを受けてようやく安心できたと話していました。

桶川の事件も川崎の事件も、もし警察がもっとしっかり対応していれば防げた可能性があると考えると本当にやり切れない思いです。

今回紹介した件は、それらの事件に比べればごく軽微なストーカー事例だったかもしれません。それでも、事態をまったく軽視することなく、すぐに毅然とした対応を徹底した警察官の存在には希望を持ちたいと思います。

(本記事は『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』2025年5月16日号の一部抜粋です。このつづきに興味をお持ちの方はぜひご登録ください)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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