親を介護しながら働く「ビジネスケアラー」が300万人時代へ突入した日本の現実

 

介護を理由に離職する人は毎年10万人程度で、約8割が女性です。一方、ビジネスケアラーの男女比は、男性が6割程度と、男性が多いと言われています。ただし、これには隠れ介護者が含まれていない可能性も高いので、実際の数字はもっと多いと考えた方がいいかもしれません。

もちろんまだわずかではありますが、ビジネスケアラー問題に真剣に取り組む企業もあります。以前、取材させていただいた日立製作所もそうでした。同社では45歳以上の社員が半数程度を占めることから、「介護離職はしない・させない」を合言葉に、2018年から「教育」と「支援施策」の乗り出しました。

「40歳以上の全従業員に仕事と介護の両立に関する基礎教育」と「全管理職に仕事と介護の両立マネジメント研修」を実施。「隠れ介護は経営リスク」という企業戦略のもと、金銭的サポートや在宅勤務やスポットリモートワークなどの勤務柔軟化など、かなり充実した社内制度が整備されています。

国は介護制度をとりやすくする制度改正を進めていますが、制度だけを充実させても使われなければ意味がありません。そういった意味からも、同社が行っているような「介護社員教育」をマネジメント層に徹底することは不可欠です。

しかし、残念なのは企業側はこの人手不足に直面してもなお、50歳を過ぎたら「在庫一掃セール」にかける究極のエイジズムを続けているという歴然たる事実です。

「若手に転勤は命じられないので、役職定年者に転勤辞令が降りるようになった。私が転勤を命じた相手は、親を介護する52歳の元上司だった」

「親の介護で休職を申し出たら介護休暇を使えばいい、とアドバイスされたのでホッとしたのも束の間。閑職に異動になった」

これらは実際に私が聞いたケースです。

厚生労働省が介護離職した人に対して行った調査でも、仕事を辞めた理由は「勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった」が43.4%で最も多く、「介護保険サービスや障害福祉サービス等が利用できなかった、利用方法がわからなかった等があった」30.2%と続いています。

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