NTTドコモによる住信SBIネット銀行の買収が発表され「ドコモが金融でも独り勝ちか?」という声があがっています。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、実際の現場から見えてきた複雑でリアルな競争の構図について語っています。
住信ネット銀行の買収で、ドコモは本当に「独り勝ち」できるのか
今週、ダイヤモンドオンラインで鈴木貴博さんの「こりゃドコモ独り勝ちだわ…住信ネット銀買収でソフトバンクもauも楽天も余裕で超えたドコモがメガバンクに肉薄する未来」という記事が載っていた。
鈴木さんは「スモールビジネス向け金融」の分野ではすでに住信SBIネット銀行が強く、NTTドコモと組んだことで業界にイノベーションが起こるのではないかと指摘していた。確かに納得のいく主張であった。
2年前に個人事業主から法人になったのだが、その際にいろいろと悩んだのが「銀行」だった。法人をスタートさせる上で、登記をしたあと、すぐに必要となるのが銀行口座だ。自分の場合、個人ですでに仕事をしていたため、すぐにでもギャラが振り込まれてくる。その受け皿として法人口座が必要なのだが、開設のための審査に時間がかかったり、手数料にもバラツキがあり、さらにはウェブやアプリの操作性など、結構な違いがあるのだ。
そんななか、最も開設スピードが速く、アプリの使い勝手もよく、手数料が安かったのが住信SBIネット銀行だった。同時に楽天銀行と三井住友銀行も開設手続きを進めたのだったが、楽天銀行はすぐに開設できず、またウェブ周りの操作性もWeb1.0時代を思わせるものであった。
三井住友銀行は時間がかかり、近所の店舗で手続きをしなくてはならないなど、結構、手間であった。また、ユーザーインターフェースがわかりづらく手数料が高すぎた。
結局、いまのところのメインバンクは住信SBIネット銀行だ。
ただ「スモールビジネス向け金融」という点においては、楽天銀行とPayPay銀行の門戸が広いように思う。開設する際のウェブページもわかりやすく、手数料も安い。なぜ、この2つの銀行のハードルが低いのかと考えたが、やはり楽天銀行は楽天市場に出店するネットショッピング店舗、PayPayは街中で商売をしている個人商店などをターゲットにしているからなのではないかという結論に至った。
スモールビジネス向け金融分野において、住信SBIネット銀行が強く、楽天銀行とPayPay銀行が追いかけているという状況だ。
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