WWDC25で発表されたiPadOS 26は、MacOSに限りなく近づいた操作性を見せ、多くのユーザーにiPadがMacに進化する日も近いのではと思わせました。しかし、アップルの哲学は今も変わらず、タッチとキーボード。2つのUIの思想が分かれるなか、iPadとMacの未来はどうなっていくのでしょうか。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、iPadOS 26から見えたApple製品の変わらないスタンスと新たな戦略について語っています。
iPadがMacになる日はやってくるのか—-2011年から変わらない「MacとiPadに対する操作思想」
今回のWWDC25、基調講演での目玉の一つと言えたのが「iPadOS 26」だろう。アプリの画面を複数、重ね合わせることができるなど、見た目や操作性はMacOSにかなり近づいた。もはやiPadOSとMacOSはひとつになってしまうのではないかと思わせるほどだった。
現地取材で「この2つのOSは一緒になっていく運命なのか」という質問をぶつけたところ「iPadはタッチファーストのデバイスであり、指でのタッチやペン入力が中心。一方、Macはキーボードファーストであり、2つが交わることはない」との回答が得られた。
この言葉を聞いて思い出したのが2011年のことだった。
2011年12月に、当時、まだアップルのオフィスが初台の東京オペラシティにあったころ、製品開発の責任者をしていたフィル・シラー上級副社長にインタビューしたことがあったのだ。
iPadは2011年春に登場したばかり。フィル・シラー氏に「MacBookにタッチ操作を導入するつもりはないのか」と質問していた。実際、そのころ、Windowsノートパソコンは画面をタッチするという操作体系を導入していたこともあり、MacBookもタッチ操作を採用するのではないか、と見られていたのだ。
フィル・シラー氏は「MacBookの画面をタッチするという操作体系は、タッチすることでディスプレイが倒れるなど使い勝手が悪くなる。いちいち、指を上げるのは非効率なユーザーインターフェースではないか」と語っていたのだ。
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