「イランが一方的に攻撃されて終わることはない」と見る中国
では、今後の展開を中国はどのように見ているのだろうか。
少なくとも専門家レベルの話では、米軍の攻撃が限定的であれば、イランが一方的に攻撃されて終わることはないと見ているようだ。
戦いの初期段階でモサドにより特定された防空システムが破壊され、制空権を握られたイランは、イスラエルの攻撃が戦闘機と無人機に偏るなか、ミサイルで応戦している。これが戦いの簡単な図式だ。
ニュースを見る限り、イランの被害が大きいようだが、これも戦闘が長期化すれば分からないとの予測だ。
イランのミサイルを迎撃するためのイスラエルのミサイルが早晩底をつくのでは、との見方があるからだ。イスラエルはハマスに続くヒズボラとの戦いで、すでに多くのミサイルを使ってしまった。ミサイルのストックが追い付かないという意味だ。
またイランが使用する多種多様なミサイルは、イスラエルの防空システムでは限界があるとも言われる。
こうした問題を含めて今後の戦いをみたとき、勝敗を大きく左右するのは、やはりアメリカ軍という変数だ。
イランのウラン濃縮施設を破壊した米軍にイランが報復した場合、トランプがどんな選択をするのかは未知数だ。
それを想定して7日、米軍はすでに、カタールのアル・ウデイド空軍基地をはじめバーレーン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の米軍基地から兵器や部隊を安全な場所まで移動させている。
前述のように今回のトランプの決断は2003年のイラク戦争と酷似している。支持率が低迷するトランプは、戦争という起爆剤が必要だと判断したのだろうか。大統領がイランの核開発を強く疑っていたことは既述した。
しかし、イラク戦争との相違点も少なからず見つかる。
例えば、アメリカ国民の厭戦気分だ。
米テレビCNNが番組内で紹介したメリーランド大学の世論調査によれば、米軍がイランに軍事行動をとったことを支持するか、質問に「イエス」と答えたのはわずかに14%だった。逆に反対と答えたのは69%に上ったという。
いずれも爆撃前の調査結果だが、興味深いのは反対した69%のうち64%が共和党支持者だったという点だ。
共和党のなかにはアメリカが戦争に巻き込まれることを極度に警戒する勢力がある。第一次トランプ政権を支えたスティーブ・バノンもその一人だ。
今回の大統領の決断は共和党内部にも亀裂をもたらしながら、支持率にも貢献しないという残念な結果を招くかもしれない。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年6月22日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
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