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変態教師集団と「小児性愛コミュニティ」どう撲滅?女子児童盗撮、体液混入でも「ロリコン検査」を教員採用試験で実施できぬワケ

名古屋市の小学校教員らが女子児童の下着を盗撮し、画像をグループチャットで共有していたとされる事件。児童の所持品に体液を付着させるなど異様な行為が次々と明るみになっているが、何より日本中が衝撃を受けたのは「現役教員たちで構成された小児性愛コミュニティが存在する」というおぞましい現実だ。ネットでは「すべての男性教員に“ロリコン検査”を義務づけてほしい」といった声もあがっているが、果たしてその有効性は?米国在住作家の冷泉彰彦氏が詳しく解説する。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:教員の盗撮コミュニティという衝撃、対策は入口から

ロリコン先生を教壇に立たせない「水際対策」は本当に可能なのか?

女子児童を大胆不敵にも学校内で盗撮し、画像などをSNSで共有していたとして、小学校の教師らが逮捕されました。

秘匿性の高いアプリのチャットルームで動画を公開するなど、その手口は悪質を極めています。また、実在する女子児童の卒業アルバムの写真などを加工する「性的ディープフェイク」も大きな問題となってきました。

まず、後者のディープフェイクの防止に関してですが、恐らく小学校・中学校レベルでは、「卒アル」という文化そのものを社会全体としてあきらめる必要がありそうです。

卒アルの制作は、典型的な“中小企業の仕事”であり、善良な経営者や従業員がどんなに頑張ったとしても、情報のセキュリティを破られたらどうしようもない世界だからです。

問題が深刻なのは前者であり、「教師による犯罪をどう抑止するのか?」という点です。ただ、この種の問題を防止しようとすると、どうしても対策は網羅的になってしまいます。

ごく僅かに存在する悪質教師のために、全教員がスマホ規制や持ち物検査など、人権を無視したチェックを受けるようになるわけです。多くの先生方は、仕方がないとして従うかもしれませんが、「自分も疑われている」とか「誰もが疑われている」という職場はどうしても暗くなるでしょう。

とにかく、ブラック性の克服が課題となって久しい学校という職場環境が、さらに暗く、周囲からも敬意を払われず、ギスギスしたものになるわけです。これは心的負荷として、あまりに過大です。

教員集団にさらにストレスを加えれば、たとえば食物アレルギー対策やプールの塩素量調整など細かい実務において、疲弊した結果のミスなどが増えるかもしれません。

結果的として、ただでさえ敬遠されがちな教員という仕事から、さらに優秀な人材が離れていくことになります。

男性教員全体を疑えば疑うほど「ロリコン教員が利益を得る」という矛盾

一番恐ろしいのはこの点です。今回、明るみに出た悪質教師らをみると、ズバリ次の指摘ができます。それは、

性的な動機から、未成年児童への接触を目的として教員になった

というグループはたしかに存在している、ということです。本当に恐ろしいことですが、今回の連中はどう考えてもこのカテゴリに当てはまりそうです。

ここに悩ましいジレンマがあります。今回の事件への対策として教員集団全体が疑われ、教員という職種の魅力が下がり、優秀な人材が教職を敬遠するようになることは、悪徳教員予備軍からすると、むしろ“思うツボ”という構造になっているのです。(次ページに続く)

「ロリコン検査」は非現実的かつ逆効果。健全な母集団形成がカギに

教員全体の志願倍率が今よりもさらに下がることで利益を得るのは、女子児童に性的な目的で接近しようとする連中です。教員を志望する“悪魔”が採用されてしまう可能性が、どんどん上がってしまうわけです。

これは悪循環ですし、絶対に避けねばなりません。

そこで、手っ取り早い1つのアイディアとして、教員にやや長めの試用期間を設定し、その間に言動を厳しくチェックして悪質教師予備軍を見抜く、という対策が思い浮かびます。

ですが、この種の人物は「目的を達成するまでは我慢する」という悪知恵を備えているので、実際には難しいでしょう。

それに、仮に一線を越えた行動は我慢していたとしても、ともかく女子児童を「性的対象として見ている」わけですから、そんな人物がいるだけでも許せないと感じるのは当然です。

たとえばですが、私立小学校などで「男性なのに、堂々と女子校の教員を志望してくる」という人物は、かなり怪しいわけです。業界では恐らく、採用にかなり慎重になっていると思われます。そこで、もし危険人材をスクリーニングするノウハウがあるのなら、予備軍には絶対に知られないようにしながら、公立校などともノウハウを共有していくということは考えられます。

これは差別になるので非常に難しいのですが、危険人物を見抜く面接の質問を用意する、挙動をチェックする、アニメなど趣味との関連性からリスク度合いを判定するなど、予備軍を判別するノウハウが求められるようになるでしょう。

ただし、これらは冷静に考えるとかなりハードルが高く、実現性の低い対策と言えます。

そこで、現実的なロリコン対策は、とにかく「教員の志願者を思い切り増やすこと」になります。母数が増えれば、危険人物を採用してしまう危険性はどんどん薄まっていきます。

危険人物を事前に見抜くのは非常に難しいので、反対に「良い要素を持った志願者」を多く集めることで、誤って予備軍を採用してしまう確率を下げるのです。(次ページに続く)

ブラック職場に耐えるのは「女子児童好き」のロリコン教師ばかりという現実

では、教員志願者を増やすにはどうすればいいでしょうか?具体的には、

保護者対応は教育委員会のCS(カスタマーサービス)に一本化する
行事やプール指導、部活などの周辺業務をどんどんカットする

などが考えられます。つまり、教員という職業のブラック性を徹底的に見直すということです。

ブラックのままでは、どうしても志願者は減ります。その分、危険人物予備軍が入ってくる可能性がアップするのです。

恐らく、自分のターゲット年齢の女子児童・生徒と「一緒にいられる」ことに大きな価値を見出す、歪んだ性的動機をもった連中からすれば、その目的を達するためには、多少のブラック性など全く苦にならないという状況があるのだと思います。

何度でも申し上げますが、ブラックな職場環境によって教員の採用倍率が下がることは、悪質な連中の思うツボなのです。

決定的な対策としては、教員の待遇改善がやはり必要です。給与を含めた待遇や職場環境を徹底的に改善するのです。そのようにして、志願者を何倍にも増やすことで、危ない人物が採用される可能性を限りなく下げる、これを地道にやるしかありません。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2025年7月1日号「教員の盗撮コミュニティという衝撃、対策は入口から」の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。今週のメインコンテンツ「アメリカ社会、変化の本質を考える」や人気連載「フラッシュバック80」、読者Q&Aコーナー(アメリカ保守の環境観)もすぐに読めます。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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