小泉進次郎コメ担当大臣が暴くJA全農の「本当の罪」とは?農業の大規模化でしか「日本人が日本米を食べられない未来」を回避できぬ理由

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小泉進次郎・新農水大臣の本当の課題は、参院選向けの「米5kg2000円」という短期目標ではない。米国在住作家の冷泉彰彦氏は、「JA全農に“悪意”はなくとも、零細農家を保護するという彼らの方針は、国内消費者の利害と完全に敵対している」と指摘。日本人が日本米を食べられなくなる未来を回避しつつ、日本の農業の世代交代を成功させるには「米の大規模大量生産」しか道はないと警鐘を鳴らす。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:米騒動へ参戦、小泉新大臣は戦えるのか

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日本の農業にとって、江藤拓前大臣の失言など「どうでもいい」

石破茂総理が20日、江藤拓農林水産大臣を辞任させました。事実上の更迭劇です。理由は江藤氏の失言で、自民党佐賀県連が開いた政治資金パーティーで講演した際の発言が問題になりました。

具体的には、支援者からもらうコメが売るほどあり「コメは買ったことはありません」とした江藤氏のコメントが与野党から、自民党の中ですら保守派から中道まで、ありとあらゆる角度から猛批判を受けたのでした。消費者が米価高騰に苦しむ中で、怒りの火に油を注いだ、という理由です。

直前の動きとしては、立憲民主党など野党が、江藤氏の更迭・辞任を要求することで一致し、農水相不信任決議案提出の検討に入ることを確認したという流れがまずありました。石破総理としては、少数与党下で不信任案が提出されれば可決される可能性があり、これは「マズい」と先にクビにしたということです。

与野党の党利党略に惑わされることなく「令和の米騒動」の本質を考えよ

そもそも、この流れはあまりに「セコい」発想です。ほとんど全員が共犯と言えると思います。

まず野党側ですが、本気で怒ったのなら、あるいは国民が本当に怒っていると思うのであれば、大臣の不信任案を“チラつかせる”のではなく、堂々と内閣不信任案を出せば良いのです。

しかしながら野党はそうしませんでした。なぜなら前述のように、現在の衆議院は少数与党だからです。つまり、内閣不信任案を出したら普通に通ってしまいます。だったら強行すれば良いかというと、そうでありません。野党それぞれ、腰が座っていないのです。

漠然と人気のある国民民主も、減税に関しては威勢の良いことを言っていますが、その他の政策については明確にしていません。国全体に関するフルセットの統治能力が未知数のまま、参院選は「減税と手取り」のワンイシューで勝ちを積み重ねようという「セコい政党」ということがバレつつあります。

国民民主をはじめ各野党は、与党と同調した途端に国民がソッポを向くことも知っています。多くの野党は、仮に内閣不信任案が通ってしまうと、衆議院議員が一斉にクビになって選挙の洗礼を受けることになり、それを勝ち抜く自信がない議員を多数抱えています。

ですから、解散が怖いのです。とにかく国民の間に漠然とした「手取り不満」や「増税不満」「物価不満」がある中では、野党としては、参院選だけやって与党への不満を引き出して小さな勝利を重ねるという戦略を採っているのです。

一方で、石破内閣や自民党にとって、江藤前大臣をクビにすることはマイナスです。では、江藤氏を守ることができたのかというと、国民が怒っているようなので、参院選を控えた現在では、そのエモーションに乗るしかないというわけです。国民の米価への怒りがあるのなら、江藤氏を切った方が戦術的にはプラスという判断です。

要するに与野党ともに、極めて「セコい」党利党略で動いているというわけです。その意味で全員が共犯と言えます。

そして実は、このような話は本筋ではありません。江藤氏の「米を買ったことがない」という発言に世論が怒ったとか、それに対して江藤氏が「宮崎弁独特の表現として、問題がない場合に『買うほどある』的な表現をすることがあるので怒られる筋合いはない」と反論したとか、そういうストーリーがそもそも本筋ではないのです。(次ページに続く)

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