コメの大規模・大量生産に反対する全農は日本の未来を犠牲にしている
少々長い話になりましたが、ここからが解決策です。「日本人が日本米を食べられない」というのは、どう考えてもおかしいのですが、その解決策としては、先ほど申し上げたような農業改革を行うことが必要です。
農業を大規模化し、生産性を1桁以上上げて、日本という米作に適した気候風土の土地で、食味の良いホンモノの日本米を「大量生産」するのです。
政府内には、そうした方向性の実験をしようという動きがあります。これに呼応して、カリフォルニアの田牧ファームが福島県や茨城県で、短粒米の大規模生産の実験をしています。
大切なのは、こうした動きを全国に広げていくことです。そのような動きを通じて、食味の良い短粒米を日本の地で安く生産し、国内の購買力で対応できる水準まで値下げするのです。
これがたぶん、この「令和の米騒動」の背景にある矛盾を解決するための、連立方程式の唯一の「解」なのだと思います。就任した小泉新農水相は参院選まで時間がないので、恐らく「全員が共犯のウソ芝居」をひっくり返す自由はなく、各方面から圧力を受けているだろうと思います。
そうではあるのですが、それでも小泉氏は長年、この農業改革の問題に携わってきた人物です。「米騒動の渦中における農水相就任」は、小泉氏が温めてきた農業改革を打ち出すには絶好のタイミングだと思います。
これらを踏まえて、もう一度申し上げます。全農は米価高騰を望んでいます。円安トレンドの中で、輸出に傾斜することで、中長期の米価の高値安定へと動いています。一方で、消費者は自分たちの不安定な購買力を背景に、現在の米価に対して強い不満を抱いています。そんな中で、庶民にはカリフォルニアの中粒米を食わせろ、という動きが現実には起きています。
打開策はただ一つ、田牧ファームなどのノウハウを取り込んで、日本国内で優良な短粒米の大量生産を行うことです。全農は現時点では、これに強く反対しています。彼らには「現在の零細な兼業農家を守る」という利害があるからです。
しかし、その延長上には米騒動を解決する最適解はありません。そして、全農や農林族議員が守っている「零細な兼業農家」は、やがて消滅していくのです。(次ページに続く)