「消費者は農家の売りたい値段では絶対に買わない」という矛盾の根源
江藤氏は基本的にクラシックな農林族です。つまり供給側の利害を代表しています。要するに米農家の側に立つ人物であり、米不足と米価の高騰については、基本的に「大歓迎」という立場です。これは消費者の立場とシャープに対立します。
これは問題の本質を「見える化」するには良い観点です。
長年、米価の低迷に悩み、古くは出稼ぎとか、その後は兼業農家としてやっと生計を立ててきた米農家にとって、米価の引き上げは悲願でした。江藤氏の「買ったことはない」という居直りの背景には、「これまでの米農家の苦しみが理解されなかったのだから、買う側の痛みは我慢してもらいたい」という農家の立場があるわけです。
また、だからこそ江藤氏は、自民党の農林族異端派として農政改革を模索してきた小泉氏のことが「お前なんか嫌い」なのです。
だったらこの際、米価高騰を「悲願達成」と喜ぶ農家側と、「生活が成り立たない」と怒る消費者側が徹底的に対決して、それこそ選挙の争点にしてしまうのはどうでしょうか?
ですが冷静に考えると、消費者側に立って米価抑制を強く主張すれば米作地帯の票が逃げていきます。その反対も真理ですから、どう考えてもこのままでは参院選の争点にはできない状況です。
今回の問題の本質、つまり「5キロ4500円以上という米価は『悲願の達成』なのか?『生活の崩壊』なのか?」を、選挙で決着させることはできそうもないのです。
そんなわけで、江藤氏の発言を切り取って騒ぎ、また江藤氏をクビにして済ませるという一連の流れは、問題の本質から逃げるだけの行動であり、政界・マスコミ全員が共犯のマヌケなドタバタ劇と言えます。
そのうえで、本当の本筋を考えていく必要があります。どうして米作農家は米価の高騰を願うのか?そして、なぜ消費者はそれに耐えられないのか?「農家の売りたい値段では、消費者は絶対に買いたくない」という矛盾はなぜ生じているのか?という問題です。(次ページに続く)