トランプが警戒する「新しい証言」「新しい写真や動画」の暴露
一方で、マックスウェルというのは、メディア王ロバート・マックスウェルの愛娘であり、大富豪の家に生まれつつ複雑な生い立ちをしてきた人物でもあります。教養人でもあり、その一方で愛したエプスタインに洗脳されて、女性として未成年の女性を愛する男性に貢ぐという迷路に落ち込んだ人物でもあります。
その彼女について言われているのは「議会証言をさせるのなら、恩赦をして新たな事実が出ても訴追されないようにすべき」という意見もあります。先程申し上げたように、恩赦すれば大統領に不利な証言はしないという説もある中で、どうなるかは分かりません。
それよりも何よりも、例えばこの間、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙などは、「エプスタインに対してトランプが送った誕生日レター」なるものを暴露していますが、トランプ氏本人は激怒したようです。
最初に申し上げたように、トランプ夫妻がエプスタインと親密であったことは、周知の事実だと思いますし、動かぬ証拠は山のようにあります。ですから、仮に「ファイル」が公開されたとして、またマクスウェルが議会証言したとして、エプスタインとトランプ夫妻の交友関係が改めて確認されたとしても、特にそれで大統領の権威が失墜するとは、通常は考えられません。
仮に、トランプ夫妻が「エプスタイン=マックスウェルの未成年者に対するトラフィッキング行為を明らかに知っていた」とか「行為を幇助していた動かぬ証拠が出た」ということになれば、話は別です。
特に、大統領が頑強に否定しているエプスタインの所有する島の別荘に行ったという事実が出れば、そして、その島で行われていた口に出すのも憚られるような行動にトランプ夫妻が参加していたとなれば、かなりの問題になるとは思います。
ですが、さすがに違法行為への幇助や参加、隠蔽への加担ということはなく、あくまで交友関係だけだった、となれば常識的にはこれだけ支持者には持ち上げられていた大統領ですから、問題はないはずです。
そうなのですが、大統領はたとえ「交友関係の確認」だけにとどまったとしても、「新しい証言」「新しい写真や動画」が表に出るのは、非常に警戒しており、それが疑心暗鬼を生んでいるというのが現状です。
今回の問題ですが、とりあえず大統領が危機を脱する可能性は相当にあるとは思います。問題が過去形であり、2015年以前の倫理観ではアウトでも、トランプ氏自身が作り上げた「やんちゃで庶民的な倫理基準」からすれば、恐らく今でもセーフとなる可能性が強いと思います。
そうではあるのですが、大統領としては、仮に問題のファイルを公開した場合、しない場合、そしてマクスウェルが証言した場合、しない場合、そのマクスウェルを恩赦する場合、しない場合など、選択肢は複数あります。そのいずれに関しても、カリスマ性が「全く傷つかない」で済むことは少ないように思います。
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