経済を知らない野党のタワゴト。「企業の内部保留を吐き出せ」が無理筋である根本的な理由

 

形成すべき財政規律に関する国としての合意

1つは、とにもかくにも、国内の個人金融資産とチャラになる額を超えるレベルに、国家債務が膨張していき、遂に国際市場に対して国債を真剣に売らなくてはならなくなる、このタイミングをできるだけ先延ばしすることです。

このタイミングは、非常に重要で、その瞬間からは日本国債というのは、GDPの200%を超える債務を背負った先進国中最悪の評価を突きつけられます。そうなれば、相当な確率で高金利、つまり低評価となった国債を売り続けることになります。これはそのまま超円安、ハイパーインフレに直結します。

仮に、輸入の化石燃料に大きく依存した状態で、あるいは食糧や資材も大きく海外に依存した状態で、このハイパーインフレと、超円安が発生すると、短期間に国民の生活水準は大きく損なわれてしまいます。ですから、このような破綻をできるだけ先送りすることが大切です。

2つ目は、これ以上の資産や生産設備の海外逃避を抑えるということです。特に大企業、多国籍企業は、加速度的に生産設備など海外投資を増やしています。トランプ時代ということで、どの国も自国の雇用を守るのに必死です。そうなると、日本という自国の人口と購買力に先行き不安のある国、そして改めて外需で経済を建て直さなくてはならない国には不利になります。

そんな中であるからこそ、限られた経営資源、つまりヒト、モノ、カネを国内に再投資してGDPを守っていかねばなりません。モノに関わる貿易であれば、関税戦争で不利になるのであれば、金融やソフトなどの知恵を資産にする、知恵で稼ぐようなモデルも追求すべきです。

第二次大戦前は、不安定化する世界の中で日本を始めとする経済的に脆弱な国からは、資産の対外逃避ということが起きました。現在の日本の場合は、個人レベルの資産の対外逃避は静かにこっそりと進行しているだけで、しかも国税も目を光らせています。一方で、企業が現地生産のために生産設備を海外移転すれば、技術は逃げ、設備投資も雇用も逃げます。この動きを、どう抑制するのかが問われていると思います。

いずれにしても、現在の日本円と日本経済は袋小路に入っています。減税や給付といったバラマキではなく、経済の基盤を再強化するために、具体的な政策の組み立てが必要です。まずは、「日本経済イコール日本発の多国籍企業の連結決算の合計」というエリート層の誤解を壊すことが肝要です。

これでは、GDPはいつまでも拡大せず、グローバルな経済の恩恵を直接受けない産業、地域、ヒトにはカネが回って来ないからです。今こそ、日本経済の、日本円の衰退を止め、破綻を回避し、ドル円を適切な水準で安定させることが大切です。そのためにも、財政規律に関する国としての合意を形成しなくてはなりません。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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