「わたしたちの」という言葉に込めた願い。芸術と対話に見る共鳴の力を知ろう

 

そんなイメージと相対し、ビーチボーイズの内実は苦悩がつきまとう。

マネジャー役を買って出たメンバー3人の父親の横暴、リーダーのブライアン・ウイルソンの精神的な病状やメンバーの麻薬、権利をめぐる争い。

知れば知るほど、混乱を極めるバンド内のいざこざではあるが、不思議とこのグループは解散はしない。

そして、5人のメンバーのうち今年、3人目が亡くなった。

しかし、ハーモニーは今も色褪せない。

それはどこか、世界が硬直化する中で、人を賛美するような響きを伴い、輝きが増しているようにも思う。

こんな話を展開したのは、共鳴に関する普遍的な価値を共有したいのが、拙著の論点でもあるから。

表題の「わたしたちの」に込めたのは、共鳴する社会、コミュニケーションを作っていきたいからである。

最近では対話調整の一環として、みんなの大学校の研究部門であるケアメディアラボの大内雅登・主任研究員が「共在対話」との考えを説いている。

これは「他者の語りを導き出すための問いを持ち寄りながら、正解を前提とせず、評価を保留しつつ、関係そのものを立ち上げていく実践」との定義である。

それは共鳴ではあるのだけれども、正解を前提としないことが重要なのだろう。

そう、交響曲もビーチボーイズも、そして個人同士の対話も、その瞬間のハーモニーの美しさに感動していくことが大切。

ここからまた新たな共鳴が始まっていくのである。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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