進次郎も高市も「不安」しかない。石破が超えられなかった日本国首相に求められる“3つの高いハードル”とは?

 

一番奥にある大事な「中の人の実力」という要素

3番目として、一番奥にある大事な要素というのは、やはり首班の「中の人」の実力です。具体的には2つあり、何よりも政策に関する理解度が重要です。世論のリテラシーを低く見て、思い切り簡素化して言うにしても、あるいは面倒なことを丁寧に説明するにしても、問題点が理解でき、有権者に売り込む政策を巧妙に説明できる能力がなければダメです。

今回は特に、コメと物価について、政権を担う以上はマトモに喋れなくては、一発で政権は崩壊すると思わなくてはなりません。

もう一つは外交です。首脳同士の信頼関係というのは、何もそんなに高度なことが要求されるわけではありません。日本国には外交方針があり、局面に応じて総理が行う外交には方向性も裏付けもあります。それを理解して、あとは国際的な社交のイロハを間違えなければ、前へ進むことはできます。

ですが、この種のコミュニケーションについて、全く不向きな人がなると、これは本人も周囲も苦しむことになります。周囲のブレーンを含めて、国内向けにも国際的な外交の世界でも「コミュニケーションの軸」として機能する「マシン」となれるのか、これが最終的には大きな要素になると思います。

整理しますと、コメと物価を中心とした喫緊の課題に関する解決力、そしてイデオロギーをメッセージとしながら政策を実現可能なゾーン内に入れる政治勘、そして「中の人」の素のコミュニケーション・スキル、という3層。これで候補一人一人を見ていくことになると思います。

振り返りますと、官房長官として、あれほど政策と政治に精通していたと思われた菅義偉氏も、国民との対話力としてはほぼゼロに近かったわけです。また、外相として、ベテラン議員として知性も能力もあると思われていた岸田文雄氏も、中の人の知性や判断力は全く平凡であったわけです。

そして、今回の石破氏もそうです。巨大な現状不満が吹き荒れる中で、選挙に勝つだけの対話力はやはり全く不合格でした。この3人の例を考え、更に若き日の麻生太郎氏の失敗、福田康夫氏の無責任などを総合した場合に、トータルの印象として浮かび上がるのは、やはり不安感です。

今回の、小泉進次郎、高市早苗、小林鷹之、林芳正、茂木敏充、といった顔ぶれの中で、誰か、こうしたハードルを超えられる人材がいるのかどうか、どうにもこうにも不安が残ります。まずは、コメと物価そして財政規律について、徹底した討論をやって、その中でパフォーマンスを評価してゆくことが必要ではないかと思われます。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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