進次郎も高市も「不安」しかない。石破が超えられなかった日本国首相に求められる“3つの高いハードル”とは?

 

麻生も森山も「自暴自棄」に陥っているのが事実か

ですが、一過性の給付にしても、恒久的な減税にしても、財政規律には反します。つまり国家の債務を増やす政策です。そうなれば、日本の財政は「A地点」に接近する可能性が出てきます。それは、巨額の国家債務を国内で消化できずに、国際市場から資金調達をしないといけなくなる地点です。

このAに到達すると、程なくしてB地点がやってきます。それは「金利を上げないと国債が消化できないが、金利を上げると国債価格は下がり、円も下がる」という現象が始まる地点です。つまり、高金利による貨幣価値の毀損が始まるわけで、これはイコール「悪性インフレ」のスタートになります。そこから先は、どんどん日本のアルゼンチン化が加速していき、C地点に至ります。

そのC地点というのは、資産の海外逃避が始まるポイントです。そして、その先に待っているのは、国債の支払い不履行、つまり国家の破綻ということになります。現時点の日本はまだ大きな経済規模を持っていますので、仮に国債の支払いが不履行になっても、IMFなどが乗り出すことはできません。日本経済は「大きすぎて破綻させると、地球上の経済全体が大被害を受ける」からです。

ですが、仮に円が十分に安くなり、GDPが相当に縮小してくると、破綻が可能になっていきます。とりあえず、その時点では日本国内の経済秩序も、社会秩序も相当に崩壊している可能性があります。いずれにしても、B地点からC地点になると、国民の生活水準は大きく損なわれ、物価高に加えて品不足も顕著になるでしょう。その前に、根本的な手を打って、破綻へ向かうシナリオを食い止める必要があります。

現在の減税論議、給付論議にはこの点が決定的に欠けています。今回の政変では、森山氏の影響力と麻生氏の影響力が力比べをしているというデッサンがされています。ですが、この両氏ほどの人物となれば、日本がA地点を超えてB、そしてCへ向かうことへの恐怖と、それを回避することへの責任感を感じているのは間違いないと思います。

ですが、同時に麻生氏も森山氏も「今の世論に対しては財政規律などという難しいことを言っても理解してもらえない」という自暴自棄に陥っているのも事実だと思います。それでは、ダメなのです。また、野党各党も有権者に媚びるのは得意でも、この種の説明をするだけの気迫のある政治家は皆無だと思います。

そんな中で、自民党は少なくとも「財政規律」は意識しています。ですから、恒久的な歳入低下を招く減税ではなく、一過性の給付を志向しているわけです。その延長で、次期政権はいったい何をどのように国民と対話していくのか、これは大きなハードルになります。

簡単に整理しますと、コメと物価対策というのは、一刻を争う急務です。この2つの課題に対して、どのような対処するのかということは、失敗すれば一発で政権が吹っ飛ぶ中での大きな試金石になると思います。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 進次郎も高市も「不安」しかない。石破が超えられなかった日本国首相に求められる“3つの高いハードル”とは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け