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半人前の進次郎でも“チンピラ右翼”高市でも無理。ベテラン政治ウォッチャーたちの多くが期待を寄せる自民を救う総裁候補の名は?

直近の衆参両選挙で議席を大幅に減らし、歴史的な危機にあると言っても過言ではない自民党。10月4日の総裁選に向け5人の候補全陣営はラストスパートに入っていますが、果たして誰が同党の救世主となりうるのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、「2強」と目される小泉進次郎、高市早苗両氏では自民党を救えないとしてその根拠を明示。さらに多くの政治ウオッチャーたちが林芳正氏の「決選投票進出」に期待を寄せている理由を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:小泉◎、高市○、林▲か、自民党総裁選/しかし、まずは連立組換えという難題が立ちはだかる

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

本命は進次郎、対抗が高市、穴は林。歴史的危機に直面した自民を救えるのは誰か

10月4日の自民党総裁選は、大方の見方は小泉進次郎が本命、高市早苗が対抗、林芳正が穴、というところで、その通りに進めば、高市は決選投票に残っても小泉に敗れ、1年前と同様、涙を飲むことになりそうだ。

自民党のベテラン秘書氏に訊くと、

「そもそも小泉と高市が中心の争いになるというのが、一般世論調査の人気投票的な結果の反映で、軽々しいというか、上滑っている話です。

自民党は93年に細川護熙さんに政権を明け渡して以来、単独では政権を取れなくなった。94年には社会党委員長を首相に担ぐという奇策で政権につき、それをステップに自社さの枠組みの上で橋本龍太郎首相を実現したが、98年参院選で大敗。

小渕恵三政権に変わっても政局運営に行き詰まり、99年に自自公、自保公を経て自公になり、(民主党政権期間を挟んで)25年間やってきて、今回、自公だけでは衆参とも過半数が確保できないという、四半世紀ぶりに訪れてきたいわば歴史的・構造的危機に直面した。

この危機を突破して救世主になりうるのは誰かという総裁選でしょう、今回は。それなのにねえ……」

と憤慨しきりなのである。

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「まず高市はありえない」という誰でも分かる簡単な理由

ベテラン秘書氏の見方では、まず高市はありえないという。

理由は簡単。公明党は高市の右翼的体質には流石に付いていけず、高市なら連立を離脱する可能性がある。ただでさえ自公では足りず、維新の会なのか国民民主なのか、あるいはその両方なのか、連立相手を増やさなければならないという時に、長年のパートナーである公明が去ってしまうとなると、その先の連立工作は混沌となる。

しかも、その長年のパートナーシップの実体的な基礎は自公の選挙協力にあり、公明が「選挙区は自民党、比例は公明党に」という選挙活動をやってくれるお陰で辛うじて勝っている自民党の選挙区候補は数多い。

維新の会も国民民主も、公明の(衰えたとはいえ)全国的な地方議員と熱心な創価学会活動家のネットワークを代替するだけの組織力など到底持っていない。

そうすると、いよいよとなった場合に、公明が嫌う高市はやめておいた方が無事だという判断が働くのだと言う。

しかも高市は右翼的と言っても、本物の右翼のような品格は持ち合わせず、むしろ反対に下品で、それは例えば最近の「奈良市の鹿を一部外国人が足で蹴る」「日本人の気持ちを踏みにじって喜ぶ人が外国から来るようなら何か〔規制?〕をしなければいけない」という発言に現れている。

その根拠を問われると彼女は「自分なりに確認した」と述べたが、奈良県の公園管理関係者はそのような事実は確認されておらず、またその件で高市から問い合わせを受けていないことを明らかにした。

何の根拠もなしに、徒に外国人への敵意を煽るようなデマを口にするようなチンピラ右翼は、いくら何でも総裁・総理になるべきでなかろう。

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進次郎という一知半解の若い衆に委ねて本当にいいのか

小泉が人気があるのは今に始まったことではなく、それは国会議員の心理として、誰と並んだ写真で選挙用ポスターを作りたいかと言えばそれは若くて知名度があり見栄えのいい小泉が一番ということになるからである。

しかし、今問われているのは自民党の歴史的・構造的危機であり、ひいては日本自体が衰退の淵に追い詰められていてそこから救われる途はあるのかという切羽詰まった問題であって、それをこの何でも一知半解の若い衆に委ねて本当にいいのかを考えなければならない。

彼が依然として人気No.1を維持しているのは、今年5月に急遽農相に登用されて、米騒動の間テレビに映りっぱなしになったことが与っているが、彼がやったのは政府備蓄米をコスト無視で安く放出して「米がない、高くて買えない」という消費者の悲鳴を取り敢えず鎮静したということだけで、米農家が食っていけるだけの買取価格を保証しながら消費者にできるだけ安い価格で安定的に供給するという二律背反的な難問には手を着けずに放ったらかしている。

結局、本質的な問題はろくに理解しておらず、一部農水官僚の言う通りに踊って見せたものの、その農水官僚も実は着地点は分かっていなかったので、逃げてしまったというお粗末の一席だった。

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進次郎に導かれ地獄への道を進むことになる公算大の自民

そうした中で、ベテランの政治ウォッチャーたちの多くは、林芳正官房長官が何とか高市を凌いで決選投票に残れないものかと期待している。

残ったところで小泉に勝てる可能性は小さいが、そこで改めて、テレビ受けはいいが中身が心配な若い衆と、一般的な知名度は高くないが中身がしっかりしている練達の士と、どちらがこの危機状況に相応しいかをよくよく考える機会が生じた場合に、ひょっとして理にかなった結論に至るかもしれないということである。

林は6つの閣僚を経験し、岸田・石破両政権で官房長官を担当し、本人も冗談めかして言うように「困った時の119番」として何でもこなせる力量を備えている。

体質的には、大平正芳、宮沢喜一から加藤紘一へと連なる旧宏池会の保守リベラルの流れがどこへ行ったか行方不明になって久しい中で、まさにその再興者として立ち現れることになろう。

前日中友好議連会長で、官房長官になったため森山裕自民党幹事長にそのポストを譲ったという中国通であることも、“脱安倍化”、ひいては対米自主へのシフトが課題である外交局面には好適である。

連立の組換えに当たっても、まず公明は林なら連立に残ることは確実なので、まずそこを固めて、次に各野党と落ち着いて協議することができる。尖った高市では連立協議は難しく、小泉には老練な駆け引きはできない。

そういう訳で、本誌も含め、この局面では林になるのがせめてもの正当な選択と思えるのだが、現実は、小泉に導かれて自民党は地獄への道を進むことになる公算大である。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年9月29号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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