トランプも止められぬイスラエルとロシアの蛮行。和平より“自己保身”を優先する指導者たちの危険な共通点

 

戦争による破壊のみならず内部崩壊も始まったウクライナ

しかし、肝心の欧州各国はなぜかこのハンガリーの反ウクライナ姿勢を諫めることもことはしていませんし、気のせいか中東欧には反EUで親ロシアの政権・リーダーが増えてきており、欧州全体の対ウクライナ姿勢に変調が目立ってきているように思うのですが、私の思い過ごしでしょうか?

ロシアは3年半にわたる対ウクライナ侵攻においてそれなりの人的な損失も被っており、いくら中国やインドに経済的に支えられているとはいえ、経済的なスランプにも陥っていますが、それが士気を下げることもなく、プーチン大統領はさらなるロシアの拡大を目論んでいると言われます。

恐らく今後、ポスト・ウクライナ戦争のステージで、ジョージアに軍事的な影響力を行使する以外に、バルト三国に対して「武力でちょっかいをかけて、少し損害を与え、かつ地元民に対する暴行などを通じて恐怖心を植え付けて、さっと撤退することを繰り返す作戦」を実施し、NATO憲章第5条の集団自衛権が発動できるかどうかを試すという賭けに出て、欧州そしてNATOの切り崩しに取り掛かるものと考えます。

まるで1936年にのちの戦争を見越して、ナチスドイツがフランスとイギリスの反応を見るために行った“ラインラントの進駐”のように(注:1919年のベルサイユ条約により、ラインラントは非武装地帯に設定されたが、1936年3月7日にナチスドイツ軍が2万数千人のドイツ兵をラインラントに侵入・進駐させたにも関わらず、イギリスもフランスも“誤解から”反応を示さなかったことでナチス党およびヒットラーの国内での支持が爆上がりし、その後の第3帝国設立のきっかけとなったと言われている。結果としてフランスの軍事的な優位が崩れたことが衆目に晒され、それがのちの第2次世界大戦につながったと言われている)。

ちょっと前までなら(恐らくあのバイデン政権でも)、アメリカが飛んできてNATO防衛および同盟の軸としてロシアと対峙する行動に出たかもしれませんが、トランプ大統領および政権は、口先ではNATO重視を唱えつつも、欧州の危機に対してアメリカが軍を派遣することは考えていないだけではなく、ロシアとの直接的な衝突を何としても避けることをトッププライオリティーに据えているため、非常に消極的な行動に出る可能性が高いと読んでいます。

そうなると欧州が自らロシアと対峙する必要が出てくるのですが、そのキャパシティーは欧州にはないことが明らかになっており、そうなると、すでに極右勢力や右派の政権が対ウクライナ支援の打ち切りを公言しだしているように、欧州は対ロ防衛の充実を喫緊の課題に設定せざるを得なくなり、全くウクライナ防衛・支援どころではないと思われます。

ゆえにゼレンスキー大統領とウクライナとしては、ロシアという恐ろしい敵と対峙して奮戦しつつ、振り返ってみたら誰もいないという恐ろしい状況が近く生まれそうなのですが、そのウクライナ国内も対ゼレンスキー大統領の支持の陰りが顕著になっていることと、歴史的に有名な中央政府とキエフ市長の対峙のみならず、軍と大統領の意見のずれとゼレンスキー大統領が進めようとしている権力の集中に対する反抗が頻発してきていることから、ウクライナはもう戦争による破壊のみならず、内部からの崩壊が始まっていると思われます。

それゆえでしょうか?

最近の広域欧州の安全保障について協議する際、ポスト・ウクライナ、ゼレンスキー後の世界、特にロシアの取り扱いについて話題が頻繁に出てくるようになってきています。あとは、ifではなくwhenということなのではないかと感じます。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • トランプも止められぬイスラエルとロシアの蛮行。和平より“自己保身”を優先する指導者たちの危険な共通点
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け