ハマス側が払拭しきれないネタニヤフへの疑念
停戦の協議および動きが停止してしまっているロシア・ウクライナですが、停戦と言えば今、まさにガザにおける停戦(戦争終結)に向けた“取引”と“協議”がエジプトのシャルムエルシャイク(実は気候変動COPが数年前開催されたところ)で行われています。
時系列や速報などについては報道に任せるとして、一体ここでどのようなことが起こり、どのような結果が期待できそうなのかについてお話ししたいと思います。
トランプ大統領がしびれを切らしたのか、または自らのレガシーづくりのためかは分かりませんが、国連総会に際して訪米していたイスラエルのネタニエフ首相とホワイトハウスに招き、前日までNYでアラブ諸国の首脳に諮った和平案20項目を提示して、受け入れを迫り、その場で“受入れ”を公言させたのは、これまでにない大きな成果だと評価できると思います。
ただ気になるのは、ネタニエフ首相が受諾前に、トランプ大統領がアラブの首脳と練った内容に数か所修正を求めたことで、それが“修正”20項目としてガザに提示された点です。
すでにハマスの政治部門は受け入れを表明していますが、ガザに潜伏する戦闘部門は反対しており、ハマス内部での調整の困難さが浮き彫りになっていますが、その要因は、交渉のカードである“人質”の全員解放を行っても、イスラエル軍の撤退や人道支援の即時回復、そして恒久停戦が実現しないのではないかとの“恐れ”と、これまでのイスラエル、特にネタニエフ首相による約束の撤回と攻撃の激化という現実への疑念が拭い去れないことがあると考えます。
そのハマス側の疑念を払しょくし、恐れを軽減すべく、アメリカ政府はウィトコフ特使に加え、愛娘(イヴァンカ)の婿であるジャレッド・クシュナー氏を協議に派遣して、アメリカによる和平案へのコミットメントと支持を表明する演出を加えていますが、ネタニエフ首相が訪米時に加えたか書き換えた【イスラエル軍撤退のための条件の内容】が不明瞭で、事態に合わせて何とでも解釈できそうなことから、ハマス内はもちろん、これについては、和平案への支持を表明したサウジアラビア王国やアラブ首長国連邦なども激しく憤っており、合意の見通しが怪しくなってきたと聞いています。
またイスラエルが求めるハマスの武装解除と戦後統治への関与を認めないことに対しては、ハマス側はスルーしているだけでなく、和平案に含まれるGITA案がかつてのWhite Men’s Burdenというよりは、白人欧米人支配を想起させることと、中東アラブの悲劇のきっかけとなった三枚舌外交を想起させること、そして案によると当事者たるパレスチナ人を最下層におく仕組みが提案されていることから、こちらも紛糾するきっかけとなっていると思われます。
本来、このような複雑怪奇な利害が絡み合う調停は国連の場を通じ、Third Party Neutral(中立な第三者)であるべき国連事務総長が仲介の労を担うのですが、ご存じの通り、今回はアメリカ案ですし、これまでもカタールとエジプトがイスラエルとハマスの間での間接交渉を仕切るという不思議な図式になっており、それがまた各国の外交的な利害と合わさって、訳の分からない事態に発展してきているような印象を持ちます。
今週に入って、ガザ問題に関する協議の最新情報に触れる機会を頂いておりますが、詳しくは触れることはできませんが、読んでみたところ、これぞミッションインポッシブルと言わざるを得ない状況です。
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