ここへ来て「ウクライナ有利」の分析も。時代遅れな“数の力”で戦うプーチンにウクライナが勝利するための絶対条件

 

否めないさらなる戦争の継続もしくは激化の可能性

そして何よりも和平合意の当事者でもあるイスラエルが、どこまでこの合意、特に第2段階の履行を勧められるかも不安材料です。

第1段階については、トランプ大統領へのサービスと、そしてこれまでトランプ大統領から「いい加減にしろ」との叱責を受けてきたこともあり、ネタニエフ首相は合意したようですが、連立政権を組む極右政党ユダヤの力(ベングビール党首)などは「人質も返ってきたのだから、今こそガザを占領し、ハマスを壊滅させるべき」との要求をネタニエフ首相に行っており、それがない場合には連立離脱というカードをチラつかせていることと、ネタニエフ首相自身、“ハマスの壊滅”というゴールを取り下げていないことから、不安が募ります。

特に自身の政治生命の延命を最大の目的とするネタニエフ首相としては、連立の維持は必須で、すでに来年10月までに行う必要がある総選挙を前に支持率が低下していることから、戦闘の継続を理由に選挙を先延ばしにする方策を練っていると思われるため、さらなる戦争の継続、または激化の可能性は否めないと考えます。

今回の和平合意の直前までガザ地区への攻撃を激化させていたネタニエフ首相ですが、極右勢力の要求を受けて“ガザの占領”を目指す方針を示した際には、「まだ存命の人質を犠牲にする可能性がある」と軍が止めて総攻撃は回避されました。

しかし、その“存命の人質”が帰還した今、どのような状況が生まれるかは予測できません。

またガザ和平合意の第2段階意向を進めるためには、周辺諸国の協力とコミットメントは必須ですが、エジプトでの和平会議へのネタニエフ首相の出席をアラブ諸国(特にトルコとのエルドアン大統領)は拒絶し、アラブ・イスラムの同胞に対する非人道的な行為を強行してきたイスラエルの“罪”を許容しない旨を表明し、イスラエルとの対決姿勢と警戒を弱めていないことも、今後の困難を予想させる材料です。

これまでガザへの攻撃に加え、レバノンやシリアへの攻撃、カタールに対する攻撃、そしてイランを巻き込んだ地域の緊張の激化など、アラブ・中東地域のデリケートな安定を揺るがすには十分すぎるほどの所業をイスラエルはしてきていますので、アラブ諸国の警戒心と対イスラエル猜疑心は解けていないのが現状のようです。

加えて、肝心の国際治安部隊(ISF)の具体的な役割や構成もまだ決まっておらず、約200名の隊員を派遣し、指揮系統も米軍が握るとのことですが、その他の参加国がそれを良しとしているかどうかも不明です。

そして噂のGITA(ガザ国際統治機構)についても、いろいろな噂が飛び交っていましたが、エジプトでの中東和平サミット時には議論されておらず、トランプ大統領のまとめを見ても「実質的な統治と管理はパレスチナ人のテクノクラートによって行われる」とあるだけで、その中身や構成などについても何も決まっていません。

このようにまだいろいろなことが不透明な中、真の和平が訪れるのはまだまだ先になりそうです。

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