ここへ来て「ウクライナ有利」の分析も。時代遅れな“数の力”で戦うプーチンにウクライナが勝利するための絶対条件

 

ガザ市民に対し何をしでかすか分からぬネタニヤフ

そしていろいろな話や分析を元に懸念が広がっているのが、今回、人質が解放されたことでイスラエル国民の対ガザ戦争や政府の作戦などに対する関心が一気に薄れ、まるでロシア・ウクライナ戦争におけるモスクワ市民のように、「政府と軍が戦っている戦争」という認識に代わり、どこか遠いものになってしまったら、ネタニエフ首相と極右勢力は今後、ガザ地区に対して何をするかわかりません。

トランプ大統領から釘を刺されているため、さすがにヨルダン川西岸の占拠やユダヤ人の入植拡大を強行するとは考えられませんが、仮にそのような動きになっても、イスラエル国民がどこまで関心を持ち、ネタニエフ首相の企てに反対するかは不透明というか、正直あまり期待できない気がします(とはいえ、現時点での世論調査では、ネタニエフ首相は退陣すべきと答えている国民は7割弱に達しており、7割ほどがガザ戦争の即時終結を訴えているとのことですので、イスラエル国民もうんざりしているものと思われます)。

トランプ大統領が中東、特にイスラエル絡みの問題に関わる最大の理由がアブラハム合意の拡大だと言われていますが、現行のアラブ諸国の対イスラエル感情と各国内の世論(特に反イスラエル)に鑑みると、それもあまり期待できないのではないかと考えます。

今後、中東においては、仮にすべてがうまくいったとすれば、地域におけるreconciliation(和解)のプロセスに入ることが必要となりますが、イスラエルがあまりにも広く手を出しすぎたことは決して忘れられることは無く、トランプ大統領の意図に反して、中東地域はまだまだ混乱の渦のど真ん中にいることになると考えます。非常に残念ですが。

一応、トランプ大統領と中東和平サミットを共催したエジプトのシシ大統領は「ガザは和平の道を歩む」と成果を強調しますが、そのエジプト政府もイスラエルが中東地域の“仲間”としてcome backすることはないと考えていますし、仲介を担うカタールも、他のアラブ諸国と同じスタンスを取り、ガザ和平の実現と、中東地域におけるイスラエルの地位回復や友好関係の樹立は全く別物と考えているとのことで、正直、この先に明るい光が見えてこないのが、私の実感です。

実際にエジプトで開催された中東和平サミットへのネタニエフ首相の参加は、エルドアン大統領や他のアラブ諸国の首脳からの激しい反発に遭い実現しませんでしたし、当事者であるはずのハマスも、パレスチナの代表もこの会議には参加していないという“当事者抜き”の頭ごなしに物事が話し合われる会議であるため、まだまだ真の和平の道は険しいでしょう。

この“当事者抜きの”会議と言う点では、ウクライナの戦後復興について話し合う会議も同じかと思います。こちらにはウクライナの代表は参加しているものの、戦争はまだ終わっておらず、その戦争も終結するにせよ、どのような形での終結になるのかがまだ見えない中で、“あるべき論”が語られている印象です。

日本政府が非常に重要な役割を果たしていることは心の底から歓迎し、敬意を表しますが、その会議での協議内容が実行に移されるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。

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