あながち妄想とも言い切れない「最悪のシナリオ」
仮にロシアが中国と結託し、アジア太平洋地域で(北東アジア含む)不安定要因を作り出すか、アピールしてアメリカのフォーカスをそちらに向けさせることになると、欧州に対する目配りはどうしても希薄にならざるを得ず、その間にアジアは中国に任せて、ロシアは着々と欧州に西進してくるシナリオが、より現実味を帯びてくるように思います。
複数正面で緊張が高まり、実質的に身動きが取れなくなるアメリカと、ロシアの脅威がじわりじわりと拡大してきて現実味を帯びてくる欧州各国と中央アジア諸国、そして台湾への野心をクローズアップし、かつフィリピンなどの対中強硬派の国々との間に中国が緊張を高めるような動きに出れば、欧米各国が築いてきたグローバルカバレージの網が破れ、ここに不安定極まりない中東情勢が絡んでくることになると、まさに世界は騒乱の渦に飲みこまれることになると懸念します。
あくまでもシナリオベースの分析になりますが、いろいろな状況を見てみると、あながち妄想とは言えないのではないでしょうか。
この悪循環と恐怖のシナリオを現実のものにしないためには、欧州はウクライナを守って強化してロシアに対する防波堤として確立させ、アメリカは欧州へのバックアップを続けつつ、日本や韓国などと組んでアジアの守りを固めると同時に、中東を本当の安定に導くために、イスラエルに圧力をかけて周辺国への攻撃を止めさせると同時に、中東・アラブ世界の安定の担い手としてアラブ諸国をバックアップすることが必要だと考えます。
しかし、このシナリオを現実化するには、あまりにもトランプ大統領のアメリカの行動が予測できず、かつイスラエルにべったりのアメリカの存在と、いろいろなところに同時に手を出しすぎている状況は、世界をとてもfragileなものにしてしまっているように思います。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年10月17日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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