ここへ来て「ウクライナ有利」の分析も。時代遅れな“数の力”で戦うプーチンにウクライナが勝利するための絶対条件

 

自衛のためウクライナ軍を味方に付けるべき欧州各国

これをベースに考えると、欧州はウクライナ支援を止めるべきではなく、変な言い方にはなりますが、ウクライナを対欧州の緩衝地として強化し、用いることで、欧州全域の安全保障の向上と対ロ抑止力の拡充に繋がるものと思われます。

トランプ政権下のアメリカは、気まぐれで、どこまで本気で欧州にコミットするかが読めない中、欧州自身が自らの身を守る策を早急に練り、実施する必要があります。

それこそが8年間、そして今では11年間鍛え上げ、強化してきたウクライナ軍を味方に付けることではないかと考えます。地上部隊はかなりの損傷を受けているかもしれませんが、ウクライナ兵は、欧州の部隊とは違い、この3年半以上、対ロ戦争において実戦経験を積んでおり、その間に自国製のドローンや弾道ミサイルの開発・配備も行い、ロシアに損害を与え続けています。

数の上ではまだロシアに遠く及ばないとされつつも、ウクライナ製の軍事ドローンは、数的な不利をものともせず、ロシアの防空網を掻い潜って損害を与えていますし、何よりもロシア海軍の誇る黒海艦隊に多大な損害を与え、実質的に黒海の守りを手薄にすることに成功しています。

ウクライナはまさに欧米の支援を受けて強化しつつ、自前の武器でロシアに対抗する術を編み出しており、ペンタゴンの関係者によると、「アメリカ軍もウクライナのドローンによる攻撃やデジタル・サイバー攻撃など、多くのことを、対ウクライナ支援を通じて学んでいる」とのことですので、ウクライナの軍事力は決して侮ることはできないと考えます。

ロシアは数の上では上回りますが、どんどん人海戦術で犠牲をいとわずに戦う前時代的な戦争を行っているため、それがどこまで最新型の戦い方に対して成果を収められるかは未知数だと思われます。

ゆえに、ちょっと見方を変えてみると、ロシア優位と言うのはもしかしたら虚構に過ぎず、実際にはウクライナが有利なのかもしれないと見えてきます。

ここでウクライナが“勝利”するための絶対条件があるとすれば、欧州がウクライナに対してフルコミットし、ロシアと戦うための必要な物資や軍事支援を迅速に、かつ継続的に行うことです。

国内で厭戦機運が高まり、経済状況のスランプも重なって極右勢力が台頭している欧州各国ですが、ロシアの脅威が本当に拡大しているとしたら、中長期的にはウクライナ軍を名実ともにユーラシア大陸第2位の軍事大国に変え、ロシアの脅威を欧州の前で食い止めるための防波堤としてそびえ立つ存在にするべく動くことかと考えます。

しかし現状はどうでしょうか?その逆を行っているように見えます。

もしウクライナがロシアに負けるようなことが起きれば、欧州にとっての対ロ防波堤は崩壊し、ロシアの脅威はいろいろな形で波のように欧州各国に押し寄せてくることが予想されます。

アメリカの欧州へのコミットメントが低下し、かつアメリカ政府のプライオリティーが欧州の防衛から、アジア太平洋地域での覇権確立に移っているのだとしたら、欧州の安全保障は非常に危なくなると考えます。

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