ウクライナ侵攻から得たものは無いに等しいロシア
そのロシア・ウクライナ戦争ですが、どのように評価すべきでしょうか?
ロシア優位なのか?それともウクライナ有利なのか?または完全な膠着状態に陥り、ただただ人的被害やインフラの破壊が繰り返されるだけの空しい状況なのでしょうか?
膠着状態に陥っていることは確かで、ロシア優位と言われていても、実際にロシアがウクライナ領で占拠しているのはほんのわずかであり、前線では一進一退を繰り返しています。
ロシア・ウクライナともに、ミサイルやドローンといった“飛び道具”で互いのインフラ施設に攻撃を加えていますが、互いに戦況を一転するほどの状況を生み出せていません。増えるのは犠牲者の数と破壊し尽くされた建物などの数だけです。
ロシアのプロパガンダ作戦や、中国とロシアの蜜月関係の演出、北朝鮮のコミットメント、イランとロシアのつながりの強化などをベースにすれば、やはり国力と軍事力に勝るロシアが優位に進めているものと思いがちですが(私も含め)、見方を変えてみたら「もしかしたら、ウクライナが優位なのかもしれない」という分析もできます。
例えば2014年にロシアが秘密裏にクリミア半島を併合・占拠した際には、ウクライナ側からの抵抗もほとんどなく電光石火でロシアが“勝利”しましたが、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻は、当初の予想とは違い、8年間の間に鍛え上げられたウクライナ軍と欧米諸国から供与された武器によってウクライナが持ちこたえ、ロシアが目論んだ“数日以内のキーウ陥落とウクライナ国家の崩壊”というシナリオは、侵攻から3年半以上経った今でも実現していません。
ロシアはウクライナ東南部4州の一方的な編入を宣言していますが、それを国際社会が承認することは無く、味方の中国でさえ、そこまで踏み込んでいません。
プロパガンダ戦略を通じて「特別作戦によりロシア人同胞の脅威を排除し、ロシアに組み込まれた」と成果をアピールしているものの、キーウ陥落どころか、ウクライナの心臓部をロシアがコントロール下に置くことができていませんし、恐らく今後も同じでしょう。
ロシアはこの3年半ほどで100万人を超すとされる犠牲者を出していますが(80万人という統計もあるため断言はできませんが)、この戦争から得たものといえば、ほとんど何もないと考えます。
しかし、何も獲得せずに100万人近いロシア人兵士の生命を失っているとなれば、さすがのプーチン大統領も権力基盤が脆弱になり、ロシアの内政が一気に混乱することにも繋がりかねないため、プーチン大統領としては、プロパガンダ戦略を用いながら、ひたすら戦い続け、無人ドローンによる攻撃や、先日触れたかつての“ラインラント作戦”的な軍事行動を繰り返してNATOの影響下にある周辺国に恐怖を与え続け、核兵器の脅威も時折織り交ぜながら、欧州各国に「次は欧州に牙をむくのではないか」という恐怖を与え続けて、ロシアによる復讐を避けるためという目的の下、欧州各国に対ウクライナ支援を控えさせるという結果を狙っているように見えてきます(これはあくまでも私の分析ですが)。
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