プーチン、トランプ、ゼレンスキー。戦争を「終わらせたくない」独裁者たちによる“暗黙の共犯関係”

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開戦から3年8ヶ月を経た現在も、終息の兆しが見えないウクライナ戦争。誰もが願う停戦は、なぜ実現しないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、この戦争を「あえて長引かせ続ける」各国リーダーたちの思惑を分析。さらに、プーチン、ゼレンスキー、トランプ各氏のみならず欧州各国首脳らが抱える「保身の論理」が、いかに世界の和平を遠ざけているのかを解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:包囲網が狭まるイスラエルと瀬戸際のウクライナ。そして戦い続けなくてはならないリーダーたちの運命

戦争を必要とするリーダーたち。「停戦」を唱えながら動かない各国首脳の思惑

「本当にこの戦争が終わる日が来るのだろうか?」

先週、ニューヨーク出張中に会った方たちが漏らした問いです。私も同じ懸念を抱いていますが、私が得た感触は「その見込みは低い」というものです。

ちなみに“この戦争”は、話す人によって対象は変わりますが、ロシア・ウクライナ戦争とイスラエルとハマスの争い、イスラエルとパレスチナ、イスラエルとイラン(とそのシンパ)、アフリカにおける数々の“忘れられた紛争”などを指します。

このすべてをこのコーナーでカバーすることはできませんが、今週はロシア・ウクライナ戦争について見てみたいと思います。

【保身行為と政治生命の延命のための戦争の継続】という現実は、イスラエルではもちろんのことながら、ロシアでもウクライナでも見ることが出来ます。そして戦争の直接的な当事者でないリーダーたちにとっても、ある意味、同じだと考えます。

「戦争という不条理に対して立ち上がるリーダー」というイメージは、トランプ大統領も、マクロン大統領も、メルツ首相も、そしてスターマー首相もそれぞれに必要としており、自国内における自身の権力基盤の強化と安定化のために、戦争を必要としているという印象を受けています。

内政の上では、仮に支持率が最低ラインにまで沈んでいたとしても、自らを「戦時・非常時のリーダー」と印象付けることが出来れば、権力の座に居続ける口実ができると考え、口では即時停戦を叫びつつ、実際には何も動かずに戦争を長引かせるのが常套手段です(例えば、ニュースを見る限りフランスのマクロン大統領は非常に勇ましい限りですが、国内の支持率は散々で、悪化するフランス経済に対する失政が追求され、求心力を失っているのが現状です)。

では、当事者の一人であるウクライナのゼレンスキー大統領はどうでしょうか?

2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻した際、欧米諸国は「ウクライナの首都キーウは3日ほどで陥落し、ロシアに吸収されることになる」と予想し、ゼレンスキー大統領に対して亡命を勧める国もあったようですが、実際にはゼレンスキー大統領は母国を守り、自らはウクライナに残って戦い続けるという“戦時のリーダー”の選択肢を選び、ウクライナ国民を鼓舞し、欧米諸国を引きずりこんで、ロシアからの侵略に耐え、押し返すというパフォーマンスを続けています。

結果、欧米からの強力な軍事支援のみならず、戦時下で自前のドローン兵器やサイバー攻撃、ミサイルの開発と配備という離れ業をやってのけ、ロシアの進撃を止めるどころか、時にはロシア領内にも攻撃を加えて、徹底抗戦の構えを鮮明にしています。

そして勢いに乗り、出口戦略を「ロシア軍のウクライナ領内からの完全撤退と、2014年にロシアに一方的に併合されたクリミア半島とウクライナ東南部4州の奪還」という非常に高く、かつ現状に鑑みると非現実的なゴールを掲げたのはいいのですが、いろいろな状況に直面しても、一度掲げてしまった高いゴールを引っ込めるための退路を断ってきたため、創造的な解決策の可能性を殺してしまったように見えます(とはいえ、彼の立場からすると、そういわざるを得ないのはよく理解できます)。

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