唯一の被爆国である日本への訪問直後、突如として「核実験の即時再開」を命じたトランプ大統領。にわかに信じがたいこのニュースは、大きな驚きを持って世界中を駆け巡りました。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、トランプ氏の「衝撃発言」の真意を多角的に分析。その上で、トランプ流外交の危うさを強く指摘しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:気まぐれか?外交交渉戦略か?-トランプ大統領の外交姿勢と国際情勢の行方-強まる混乱の渦と危機の足音
国際交渉人も驚愕。トランプの「核実験の即時再開」支持は気まぐれか、外交戦略か
「どうか嘘であってほしい」
今週、思わずそう願った案件が2つありました。
1つは10月30日に飛び込んできた【トランプ大統領が核実験の即時再開を命じた】というニュースです。
久々の米中首脳会談を控え、習近平国家主席に圧力をかける狙いがあるのかもしれませんが、ここにきて核実験をコマとして持ち出してきたことには驚愕しました。
「昨今の世界の安全保障環境、特に核兵器を巡るめまぐるしい動きを見ると、アメリカものんきなことを言っているわけにはいかない。すぐに核戦力の向上と刷新に取り掛かるべきだ」とのことですが、それの舵取りを担うことになるペンタゴン(国防総省・戦争省)にとっても驚きをもって受け止められたようです。
恐らくアジア歴訪に同行しているヘグセス国防長官をはじめ、側近の皆さんは前もって相談されていたものと信じますが、どうしてここにきて核実験の即時再開なのでしょうか?
また今週に首脳会談を行い、非常に親密な様子を演出した高市総理はこのことを前もって聞かされていたのでしょうか?
いろいろな憶測が飛び交う事態です。
しかし、もし本気で核実験の即時再開を実行に移すのだとしたら、33年ぶりのこととなるらしく、これまで核軍縮を進めようとしてきた歩みが一気に巻き戻されることになります。
また“核実験”がどのようなものを意味するのかについても、トランプ大統領が何を指し示しているのかは不明です。
まさか地下核実験への回帰はないと信じ、恐らく臨界前核実験(核物質を臨界状態に達しないようにコントロールして行われるため、通常の核実験のような爆発や環境汚染は伴わないもの)の実施を意味するのだと思うのですが、それだと“33年ぶり”にはならないので、かなり嫌な予感がしています(実はバイデン政権下でも臨界前核実験は数回行われているため)。
この突然の宣言、それも米中首脳会談直前の宣言は、当然、中国政府をかなり苛立たせ、あくまでも外務省報道官を通じての発言とはいえ、中国は明確に核実験の即時再開に反対し、「アメリカは、中国を公然と非難し続けているにもかかわらず、自らが核実験禁止の条約に違反する行為の実施を宣言するとは何事か」と怒りの声を上げています。
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