高市首相は聞かされていたのか?アメリカ国防総省すら驚いたトランプ「核実験の再開命令」に飛び交う“憶測”

 

フォーカスを変えると浮かび上がってくる「別のシナリオ」

欧州各国はトランプ大統領の発言に対して不快感は示すものの、クリアに非難している国はまだなく、発言の真意と“核実験”が何を指すのかを見極める方針のようです。

核実験が、先ほども触れたように、地下核実験なのか、臨界前核実験なのか、それとも核弾頭搭載可能な弾道ミサイル発射実験ということなのか?

特にジョンソン首相が以前、英国の核弾頭の増強を謳って核軍拡の狼煙ではないかと非難されましたが、その後、首相が替わった後もその方針は維持されており、英国は、実験こそ行っていないものの(臨界前核実験はあり)、今回のトランプ発言にはあえて静観を決め込んでいるようですし、もう一つの欧州の核保有国フランスも、今のところ目立った反応は見られません。

推測に過ぎませんが、トランプ発言が米中首脳会談直前の対中威嚇の材料に過ぎないという見方が有力なのだと思われますが(第1次政権時に初の米中首脳会談時の際に、トランプ大統領はシリアに対してトマホークミサイル61発を撃ち込んだエピソードがあります)、少しフォーカスを変えると、別のシナリオが浮かび上がってきます。

それはガザにおけるイスラエルの蛮行の再開から国際社会の目と非難を少し逸らすための“トランプ流”というシナリオです。

ちょっと強引な推論かもしれないことは十分に承知しておりますが、10月10日のトランプ和平合意の第1段階が実行に移されてから継続的に起こってきたイスラエルとハマス(と他のパレスチナ組織)との小競り合いに始まり、今週、突如本格化したイスラエルによるガザ全域への総攻撃(一日で終わった)に至るまで、アメリカ政府(トランプ大統領、バンス副大統領、そしてルビオ国務長官など)は「ガザにおける停戦合意は順調に履行されている」と言い続けていますが、本当にそうでしょうか?(これはメンツを守るという以上に、何としてもこの合意の履行を守り切りたいという強い意図を感じる反応です)

これが2つ目の“嘘であってほしい”ことの中身です。

イスラエル政府はトランプ大統領による仲介の結果、ハマスとの間に停戦合意を締結し、生存していた人質の全員解放を実現し、その見返りに2,000人強の政治犯を釈放しただけでなく、イスラエル軍の部分撤退も行い、合意の第1段階の履行をアピールし、それに加えて、ガザ地区への人道支援物資の搬入を許可するなどして、地に落ちた国際社会におけるイスラエル評を回復しようと演出してきましたが、ネタニエフ首相は、極右勢力からの圧力に押され、偶発的な小競り合いや衝突をハマスの裏切りと捉え、それをガザ地区への“限定的な”攻撃の口実にし、また人道支援を人質にとって、ガザにおける反ハマスの雰囲気を醸成しようと努めました。

ただ、今週に入ってイスラエル兵が襲撃される事件が起きたことと、死亡した人質の遺体の返却が遅延していることなどを理由に、ネタニエフ首相はガザに対する総攻撃を命じて、再び武力行使を行い、その際、病院もターゲットにされた結果、少なくとも104名の死者を出す由々しき事態になりました。

次の日には攻撃をやめ、「停戦合意は継続している」と言ってみたものの、これがアラブ諸国、特にサウジアラビア王国やエジプトの怒りを買うことになり、中東の和平に向けた図が根本から崩れようとしています。

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