サウジアラビアを激怒させたイスラエル財務相の侮辱的な発言
エジプトのシシ大統領は、先のトランプ和平のco-signerであるものの、公然とイスラエルを非難し、「イスラエルはガザの人たちに対して、恐怖と飢餓を武器に用いてさらなる絶望を生み出すことを選んだ。決して看過できない蛮行である」と怒りを面に出していますし、エジプトとガザの境にあり、ガザ向けの人道支援の窓口となるラファ検問所を、エジプト政府に諮ることなく、イスラエル政府が一方的に閉鎖し、支配している事態に強い懸念と怒りを表明する事態になっています。
その証にラファのエジプト側と、イスラエルとの和平合意にあるシナイ半島の非武装化地域のすぐ外側にエジプト軍を展開し、自ずと緊張が高まっています。
サウジアラビア王国については、さらに深刻で、アメリカもイスラエルも、アラブの雄であるサウジアラビア王国をアブラハム合意で取り込み、地域におけるイスラエルの存在を非常にデリケートなバランスで守るための存在にしようと躍起になっているのですが、それを閣内にいる極右のスモトリッチ財務相の「サウジアラビアがイスラエルとの関係正常化と引き換えにパレスチナ国家の樹立を求めるなら、お断りだ。…サウジの砂漠でラクダに乗り続けるがいい。われわれは経済、社会、国家、そしてわれわれが知っている偉大で素晴らしいことすべてをもって真に発展し続ける」というサウジアラビア王国を完全に侮辱し、非難し、挑発するような発言によって、アメリカとイスラエルが仕組んだ狙いは崩れ去ろうとしています。
実際にこの発言はイスラエル国内でも激しい非難に晒され、圧力に直面してスモトリッチ財務相も次の日には謝罪し、ネタニエフ首相もサウジアラビア王国に対して謝罪したものの、関係は修復不可能と思われ、サウジアラビア王国は他のアラブ諸国と共に緊急会合を開催し、「イスラエルは戦いの手を緩める気は毛頭なく、ハマス掃討を理由にガザを壊滅させ、その血に染まった手はヨルダン川西岸におよび、ヨルダンを刺激し、いずれは我々とアラブの民に牙をむくことになるだろう。団結してイスラエルの企みを挫き、イスラエルを打倒することが必要なのだということを、私たちに認識させたと激しく非難し、再度、イスラエルが決して受け入れられない“パレスチナ国家の樹立”を、今後の和平合意の内容およびイスラエルとの緊張緩和の条件として付きつけつつ、アラブ諸国およびトルコ、イランなどとCoalition of the willing(同志国同盟)を構成して、イスラエルとの武力対立にも本気で備えだしたとの報告が入ってきています。
その背後にはロシアと中国が控えていますが、あくまでも後方支援に留まり、表向きの核の傘はパキスタンが提供する形で、広域アジアを巻き込んだ危ない状況が再び表出し始めたように見えます。
アラブとその仲間たちはイスラエルへの反発と警戒を強め、アメリカに抗議の意を示し、ロシアは新生シリアのシャリア大統領とプーチン大統領の会談を設定して、ロシア軍のプレゼンスを再びシリアに置くことに対する同意を取り付け、イスラエルに対する軍事的な壁を築く動きに出て、アメリカ主導で進む中東和平プロセスに待ったをかけ、ロシア流のアラブへの支援の形を作り出すという動きにでて、当該地域における対米圧力も高めています。
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