トランプ上機嫌と高市ぴょんぴょんに焦った習近平。隣国が急きょ「日中首脳会談」に応じたウラ事情

 

高市氏のふるまいに野党から吹き荒れた「批判の嵐」

肝心なのは、日本が完全に米国についてしまわないようにすることだ。日本も中国依存の経済から脱け出せない弱みがある。いかに高市氏でも、のっけから強硬姿勢ではこないだろう。その証拠に、靖国神社の秋季例大祭に合わせた参拝を見送っている。

習近平氏はぎりぎりになって首脳会談の開催を了承した。日本のメディアは、高市首相が所信表明演説で「重要な隣国」と述べたのを中国側が評価したという理由をあげた。

両国間にはかつて日本の駐中国大使が編み出した「戦略的互恵関係」という便利な言葉がある。色々な問題があっても、経済などで互いに利益があればいいじゃないか。会談はまさにその考え方をベースに淡々と進んだ。両首脳の顔合わせが目的であり、結論は必要ない。

会談後に高市首相は、東シナ海での中国の海洋進出、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題について懸念を伝えたと記者団に語ったが、むろん取り立ててそれらを問題にしたということではない。中国側、日本側ともにかねてからの懸念点を羅列しただけのこと。だから何事も起こらなかった。

それでも不思議というか面白いことに、韓国で“早苗人気”が高まっていると韓国の人気ユーチューバーが発信している。米政府が「日米韓」の安全保障体制を重視しているせいもあるだろうが、習近平氏に臆することなく言うべきことを言ったと評価されているそうである。韓国嫌いのネトウヨ諸氏に支持される高市氏を賛美したくなるほど、韓国のイ・ジェミョン大統領は習近平氏にモノを言えないということだろうか。

それにしても高市首相があんなにパフォーマンス上手だとは思わなかった。トランプ氏や米軍の兵士に対しては、ロックスターのような乗りでアピールし、テレビカメラの入らないAPECの控室で習近平氏と会った時には、節度のある笑顔で習氏の柔らかな表情を誘い出した。交渉上手かどうかはまだわからないが、今はやりの“コミュ力”においては歴代の首相を凌駕しているといえそうだ。

むろん、こんな高市氏のふるまいに野党からは批判の嵐が吹き荒れる。かつて国連職員をつとめた立憲民主党の田島麻衣子参院議員はX(旧ツイッター)で、こうコメントした。

主催国(日本)のトップが、来賓にエスコートされるのは「立場の逆転」。そしてこの身体接触の濃さは異常。対等な国家同士、公的場面ではあり得ません。手も強く引き寄せ、一歩間違えば頬を引っ叩かれて良いレベル。

首相官邸は、この動画を出す事が、日本の国益に叶うと、本当に信じているのだろうか。

この意見はもちろん理解できる。潔癖な田島議員には許せないことだろう。しかし、相手はトランプ氏である。何事も気分しだいの因業爺さんである。まともにぶつかっても効果はない。“ジジ殺し”の技を繰り出すのも戦略だし、高市氏にはそういうスキルが備わっていそうだ。

しかも、なりたての総理だ。初の女性宰相だ。“おっさん”たちにできなかったことをやってくれるのでは。そんな期待感が大きい。ここしばらくは、お手並みをとくと拝見しようではないか。

米国と中国は、強大な軍事力を背景に、おたがい威嚇外交を繰り広げている。中国の圧迫を受け、防衛を米国に依存する日本の高市首相にすれば、トランプ大統領にすり寄り、味方にしておくほか仕方がないのも現実だ。独立国として情けないが、弱い立場でも、それなりにトランプ氏を操縦する賢いやり方はあるだろう。トランプ政権が経済ナショナリズムに走るほど、技術的パートナーとしての日本の存在価値は増しているはずである。そこを冷静に見据えて次の戦略を立てればいい。

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