教団への恨みを一人募らせ安倍氏へ銃口を向けた山上被告
山上徹也被告の裁判のなかで、彼が20万円の詐欺に遭っていたことが、検察側の主張によりわかりました。
被告は、旧統一教会の最高幹部の殺害を考えて、拳銃を取得しようとしています。
報道では、売人から「薬、武器どんなものでも用意します」というメッセージを受けて、被告は拳銃を注文します。そしてビットコインで約20万を売人に送金しますが、商品は届きません。
ここからは、詐欺にだまされないための知識が、なかったことがわかりますが、この後のやりとりでは「明日発送がないなら警察に行く」とメッセージを送るといった、全く意味のないこともしています。
犯罪者側は、拳銃入手という「後ろめたい行為ゆえに、警察には相談できない」こととわかっての詐欺です。案の定「こちらは海外拠点であり、結構です。お疲れさまでした」といった返信がきて終わります。その後、山上被告は手製の銃を作るようになっていきます。
ここから、ネットの情報を信じ過ぎる彼の行動と、周りに相談したり、助言をしてもらえる人が誰もいなかったことがわかります。
このようにして、旧統一教会への恨みを一人で募らせて、亡くなる人の気持ちにまで思いが至らずに、安倍元首相へ銃口を向けたのでしょう。
重大な事件を未然に防ぐためには、どんなささいなことでも、社会や周りの人たちがその言葉を聞こうとする環境を作れるのか。それが今後、重要になります。
特殊詐欺でも使われる「長時間の話」で判断力を奪う手口
悪徳商法では、ターゲットにした人を勧誘場所に連れ込んで、3~4時間以上の長時間の勧誘をして、判断力を奪いながら高額な契約をするように仕向けますが、その手口が、警察をかたる詐欺でも使われています。
20代男性は、ニセ警察官詐欺の手口で560万円の被害に遭いましたが、14時頃に最初の電話があり、その日の話が終わったのは19時過ぎでした。その間に、男性はマネーロンダリングの疑いをかけられて、資金調査の名目で、お金をだまし取られています。
今回、逮捕状などを見せて恐怖心をあおるだけでなく、調査名目で送金させた後に「潔白が証明された」といって、返金手続きをしたことを示す振り込み用紙の画像までみせています。もちろん、これは偽造ですが、安心させるための手の込んだ罠を仕掛けています。
恐怖心と安心感の気持ちを抱かせる。心をジェットコスタ─にのせるようにして、揺さぶっているのです。警察庁が発表する令和7年9月末時点のニセ警察詐欺による被害額が661.2億円(特殊詐欺全体の68.5%)となっていますが、その理由もみえてきます。
旧統一教会の責任と、被害を放置した日本社会の罪
母親の証言からわかることは、教義を純粋に信じて教団の上の指示に従い、妄信する信者ほど、身の丈をこえた献金をしてしまいます。さらに、ネグレクト(育児放棄)や信仰の強制をして家庭が崩壊してしまう状況があるということです。
その状況を長年放置して、海外の修練会に行かせたり、高額献金をさせたり、布教活動をさせてきた、旧統一教会の責任は大きいといえます。一方で、社会の責任もまた、しかりです。
被害を絶対に放置しない社会にすることが、安倍元首相を銃撃事件のような悲劇を引き起こさないことにつながります。
(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2025年11月14日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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